県境の長いトンネルを抜けて、しばらく経っていたようだ。
大きなあくびをしながら目をこすり、車窓の景色を眺める。あたりは一面の銀世界だった。
あれ? 二度見した。
銀世界って…ホントに銀色じゃあ、話が違うだろ。
トンネルを抜けたら雪国のはずが、銀国って…。
いや、銀国って何だよ、聞いたことねぇし。
まぁ、異世界にならあってもいいけど。
トンネルの出口付近が召喚の儀式を行う場所だったりして、そこの領有権を巡って銀国と雪国が長らく争っていたりする…。
そうだとしたら、俺は転生したってことか?
えーっ、トンネル内の事故か何かで一度死んだってことか?
いやいや、俺はとなりの県の学校に転校するだけなんだが…。神さま、転生じゃなくて転校ですから。ヒマだからって自治体の手続きを横取りすんなよ。
ヒマなら働け。トラックドライバーやバスの運転手とか人手不足が目立つところで働け。神は人界に降りられないとか、いつまでも屁理屈こねてんじゃねえ。
ほら、この握り飯やっから、さっさと食って働け。まず最初に、ここらの銀色をもとに戻しとけ。
