電車で先頭車両の一番前の座席に座っていたら、「あなたは宇宙人ですか?」と大学生くらいで服装も見た目も男とも女とも言えない中性的な人が聞いてきた。



エッと声を出したが、そのあとの言葉が出なかった。



地球人も宇宙人に含まれる的な返事をすればいいのかとも思ったが、とりあえずパニクっているように見せた。



「もう一度聞きます。あなたは宇宙人ですか?」



その言い方が「はい、私は宇宙人です」と答えさせたいように聞こえなくもない。



いったん何かカマしておかないとヤバい気がして「いいえ、私は宇宙飛行士です」と言ってみた。



「ああ、ちょうど良かったです」



えっ? 何がちょうど良かっただよ。宇宙人と答えさせたいんじゃないのかよ…。



「これを差し上げます。これがないと困るでしょう」



宇宙服だった。



コスプレ用のナンチャッテ宇宙服とは明らかにレベルが違う、近くで見ても本物っぽいものだった。



差し上げると言われても、すんなりもらうのは気が引けるくらいの出来で、お金も手間も相当かかっているはず。



コイツこそ宇宙人なんじゃないか?



コイツが本物の宇宙人で、国際宇宙ステーションを襲撃し、戦利品の中からこの宇宙服を、自称宇宙飛行士の俺に渡した…そういうことか?



ソイツは次の駅で下りた。下り際にぼそっと呟いた。



「それ、着てくださいね」



いやいや、そこは「そういうことです」とか「そういうことにしておきましょう」とかだろ!