秋の味覚は
まったくといっていいほど知らない。
秋の視覚や嗅覚とかなら、少しはわかる。
秋を感じる視覚は、
モミジやイチョウの紅葉より
ベニテングダケの赤と白いイボイボの毒々しさや、
ムラサキアブラシメジの
異世界ファンタジー風なパープル。
秋の嗅覚は、
松茸や秋刀魚を七輪で焼いたときの匂いよりも
落ちた銀杏を踏んだ靴の臭い。
秋の聴覚は、
落ち葉を踏んで歩くときに静かな森に響く
カサッ、コソッの音よりも
木枯らしのエチュードの中間部で
左手を間違えて弾いて意外に秋らしかった響き。
秋の触覚は、
いが栗をつかんだときよりも
石焼き芋の石や石焼ビビンバの器をつかんで
火傷したときの痛み。
ついでに秋の触角は、
コオロギやキリギリスの触角よりも
複眼や複葉機のような翅のイメージが強い
トンボの触角。
童話のキリギリスのように
体育祭や文化祭にかまけているから、
受験を間近に控えた秋の自覚はもちろんない。