ダルマチア・スピリトゥーサ、その名を耳にしただけなら心配ないが、うっかりその名を口にした者は、その幻を追って世界中を放浪することになる。
「ダルマチア・スピリトゥーサ」という言葉は自体は“その名”ではなく、それを言わないための呼び名であるため、これをいくら連呼しようがかまわないらしい。
ただ、ダルマチアのどこかにいる秘教の導師だけは、修行を積んだためか、その幻を宰領する魔性との契約によるものか、放浪の呪縛にかからないらしい。
いままで“その名”を口にしてしまったのは数人いるという噂だが、現地に来てみて分かったのは、それは20-21世紀の話で、19世紀以前は数百人はいたらしい。