久しぶりに家の窓からヤッホーと叫んでみた。
家は小高い丘の頂上にあるから、少し離れた丘にぶつかって戻ってくるはずだった。少なくとも10年ほど前はそうだった。
今回はその方向からカーカーと鳴く声が聞こえた。ただ、ふだん聞くカラスの鳴き声とは明らかに違っていた。
もう一度、ヤッホーと叫んでみた。
戻ってきたのは、カーカーともアーアーとも聞こえる音だった。
どうやら「ヤッホー」が向こう側で反射するときに音が変化してしまうらしい。
ただ、そこはむかしから雑木林みたいな斜面で、変わったことは生じていない。
その丘の方向だけでなく、この家の周囲もこだまの音に影響しそうな変化ない。
だとしたら、その辺り一帯の空気の状態がおかしいのかもしれない。たとえば、ヘリウムガスを吸って喋ると声が高くなる現象のように、空気の組成が一定の比率を超えて変わると音にも影響が出ても不思議はない。
とりあえず、近くまで行ってみるしかない。
当然、草木のにおいはすることはするが、それよりも何かが焦げたような異臭がした。植物性のものが焼けたにおいとは明らかに違う。かといって、プラスチックやゴムなど有機化合物が燃えたにおいと言いきれるほどのにおいではないし、近辺に工場や作業場、処分場のような施設もない。
とにかく、ここのにおいはおかしい。成分を調べてみないと、こだまの音質に影響するかどうかは分からないが、何らかの関連性はありそうだ。音には関係なかったとしてもおかしいことには変わりない。公的機関に調べてもらう必要も出てくるかもしれない。