さとるは、ルームランナーだと自称している。
とはいえ、自宅やジムなどでルームランナーを使ってはいない。
トレーニング機器を使わず、自分の部屋の中をひたすら走り回っている。
家や部屋が広いわけではない。一戸建てだが建て売りで、お世辞にも広いとはいえない物件だ。

なぜ外で走らないのか。
なぜ部屋の中でルームランナーを使わないのか。
なぜ、ルームランナーと自称するのか。

この3つの謎は、北高の七不思議のうちの3つ
を占めている。

この程度のことが、その学校の七不思議に数えられるのも不思議といえば不思議ではあるが、自分が中学のときは、北高のレベルはよほど低いのだろうと思って勝手に納得していた。

やがて自分は西高に進学したが、北高に行った友達のトオルにそのあたりのことをあるとき聞いてみた。

北高の七不思議で、ルームランナーさとるにまつわる謎以外は封印されているとかで、誰も知らないという。

いくつか推測してみた。
見栄を張ることしかできない北高関係者らしく、とにかく「七不思議」にしたくて、たった三つを七つと大きくサバを読んだとか、さとるの謎そのものが「七不思議」全体を解き明かすための鍵になっているとか⋯。

前者について、トオルは「そんなところでしょ」と相槌を打った。後者については「ないない」と否定した。

それでいい。まったくフツーにそれでいい。そのままにしておきたかった。ただ、トオルの顔つきが妙だった。

その理由は何となく分かった。

来週、トオルに会う約束をした。ヤツに何もかも吐かせるために、俺ら西高のヤバいヤツらも召集しておいた。

トオルがそれを察知して対抗措置を講じてくることも覚悟しておかないといけない。

我々が無事でいれば、またここの記事にて報告する。