焼けば、殻もそれなりに脆くはなるとはいえ、殻ごとバリバリいく猛者がいた。

「口ん中、大丈夫かよ」と半分面白がって聞くと、「いやぁ、カルシウム不足で骨粗鬆症になると医者に脅されてさ」などと答えになっていない、変な言い訳をした。

「だったら、ゆで玉子を殻ごと食えばいいじゃないか」とつっこむと、「それは朝やっている。いまはせっかくの飲み会だし冬だし、やっぱり牡蠣でしょ」とドヤ顔をされた。

たしかに。だが見せられるほうは食事をする気分ではなくなる。暇なときにオモシロ動画で見るくらいならいいが、目の前でやられると自分が食べている牡蠣にも殻のかけらが入っていそうな気がしてくるし、いつ口の中でガリッとなるか気が気でない。食った気がしない。ちょっとした罰ゲームだ。

ヤツと幹事以外は、早々に箸を置き、誰からともなくプリンやアイスなど、コースメニューに入っていないスイーツ類を注文し始めた。

二次会は焼き鳥屋になった。ヤツを呼んだ張本人でもある幹事が余計な気を回しやがった。

まぁいい、ナンコツが目当てなのだろう。フツーの人も食うし、自分も好きなほうだ。

だが、それだけでは済ますわけにはいかない。ヤツにはナンコツではなく手羽先を骨ごといってもらう。

ヤラレタ。ヤツは最初に手羽先をオーダーして、ガリガリやり始めた。
ヤツ以外はコリコリ、もしくはモグモグやりながら、その激レアなパフォーマンスを鑑賞させていただいた。

最後に「なんなら竹串ごといってもらおう」「うちらの串もご賞味あれ」「どうぞどうぞ、ご遠慮なく」「ごゆっくり~」と口々に言い残して、ヤツと幹事を置き去りに席を立った。