北岡が救急車で運ばれた。

仲田にそのことを電話で話したら、
「俺も昨日、病院から帰ってきたら鍵を無くしたみたいで救急車よんだよ」
「カギの救急車だろ」
「ちがうちがう、ドアノブの救急車だよ」

仲田は負け惜しみの半端ねーヤツだった。

昨日はヤツの部屋でいっしょに夜中までゲームしていたから、病院も行ってなけりゃ鍵も無くしちゃいない。もちろん、ドアノブの救急車なんてサービスもありゃしない。

ヤツの半端なさは、それだけにとどまらなかった。

翌日の広岡の見舞いに行った。仲田も誘ったが用事があるから次の日にでも行くとかわされた。

夕方、見舞いから帰ってくると、道具箱を提げた作業着姿の男が玄関前に立っていた。胸には「カギの救急車」そっくりのデザインの「ドアノブの救急車」のロゴマーク、そのステッカー版が道具箱に···。
「どーも、ドアノブの救急車です」と半ばドヤ顔であいさつした。
やりやがった。広岡の見舞いも行かずに、負け惜しみのリベンジをかましてきやがった。

コイツは、本当に救急車に乗せてやろう。広岡より長い入院生活を送ってもらおうではないか。
ボコり倒したい衝動に駆られたが、いわゆる“黄色い救急車”に乗せて人里離れた山間部にある病院の、鉄格子の入った病室に幽閉してやることにした。