期待に胸を膨らませる君たち、落胆して肩を落とす俺たち。

あれで必ず大成功すると思っている一年二年を見て、三年の俺たちは危機感を抱いた。
だが、OB会は危機感どころではなく、もはや失望するしかないと連絡してきた。
会長は、いつも厳しい口調で叱咤激励していただいていたが、今回は静かに淡々とした口調だった。
ついで事務局長から具体的な指示が伝えられた。
三年はもうすぐ引退の時期だが、それを待たずにキャプテン以外は強制退部の決定。二年レギュラー陣はOB会が得体のしれない外部組織の力を借りて抹殺を断行、一年は存続最低人数の5人を残して強制退部させろとの指示。しかも一両日中に完結せよという時限つきだった。

副キャプテンだった俺は、この事態をキャプテンから知らされた。
だが、俺は俺で、家庭の事情で姉妹校に転校することになっており、先週末に退部届けを出したばかりだった。

二年生レギュラーは俺の目から見てもA級戦犯だよ、あのブラックOBオッサン連中ならそういう処分もアリだもんな。田中もサクサク事を運ばないと、お前も消されるぞ。
俺は電話を切ってすぐ、関係者のアドレス帳を消去した。

奇しくもそのタイミングで伯父から電話が掛かってきた。

お前がもう退部届けを出していたならそれでいい。

伯父はそれだけ確認して電話を切った。
OB会の会長は、うちの親父の一番上の兄だった。

…そういえば、うち親父も三年のとき、夏の大会後、連帯責任で一緒に退部させられたんだった。
当時、伯父はまだ大学を出たてでOB会の事務局に入ったばかりの頃だった。

ある年の正月、親戚がこぞって伯父の家に集まったとき、親父が伯父とは一言も口をきかないのを子ども心に不思議に思った記憶がある。…きっと、同じようなことがあったに違いない。もちろん確かめるつもりもない。