どのファミレスのドリンクバーに行っても、ドリンクバーさとしがスタンバイしている。

何でだろう。

そのことに気づいてから、ファミレスに行くたびにドリンクバー付近の店員の名札を確認するようにした。
どの系列、どの店舗でも名札に「○○さとし」と書いてあった。(○○には「佐藤」など実際の苗字が入るが、わりと珍しい苗字なので伏せ字にしている)
同一人物のわけはないし、とんでもない確率でたまたま同姓同名だということなのか…。
あるいは、一人を除いて(同姓同名が三人いたら三人を除いて)「○○さとし」の名前を騙ってバイトをしているのか。そうだとして何のために? しかもなぜ、その全員がドリンクバーに張り付いているのか?

ファミレス業界のことは詳しくないが、ファミレス業界の取り決めか何かで、ドリンクバー要員は「○○さとし」とネームプレートを付けた接客する等の条項があるのかもしれない。もちろん、見て回ったドリンクバーに「○○さとし」ではなく、その店員自身の氏名と思われる名札を付けた店員もいた。この取り決めは罰則規定などのない緩やかな‘取り決め’にすぎないなのだろう。
しかし、なぜ「○○さとし」で決まったのかが疑問だ。
たとえば…、今では伝説となったドリンクバーの達人がいて、その人の名前が「○○さとし」だったからだとか、「○○さとし」はたまたま言葉の組み合わせで人の名前に思えてしまうけれども、実は業界用語でドリンクバー係を意味する言葉だったりとか…。ありそうでも、あり得なさそうでもある理由を思い浮かべてみる。

…数日後、そのネームプレートを付けた店員に訊いてみた。意外な答えが返ってきた。疑問でも何でもなかった。ちょっと考えられば分かることだったが、とんだ見当違いの道に迷い込んでしまい、もがいていただけだった。