近所に魔界と呼ばれる一角がある。
小学校の通学路沿いにあるせいもあり、
教職員や地域の大人たちの間でも
“魔界”で通じるようになっている。
そこに、いつの頃からか、
犬が常駐するようになっていた。
首輪もなく鎖で繋がれてもないのに
そこから離れようとはしなかった。
いま思えば、
自分が小学三、四年の頃だった
ような気がする。
その頃は、ポチとかハチ公とか
各自が思い思い勝手に
ありがちな名で呼んでいたが、
五年のときには、
上級生や中学生が付けたのか、
魔界の番犬とか魔界犬という呼び方が
定着していた。
きのう、
ひさしぶりにそこを通った。
いた。まだいた。
驚きと懐かしさの感情が
ない交ぜになって押し寄せてきた。
もう老犬になっているはずなのに
見たところそれほどでもない。
…二代目なのかもしれない。
あるいは…、魔界犬は
年をとらないのかもしれない。
たしかに模様や耳の傷が
小学生のときに見ていたのと
変わらない。
この記憶には自信がある。
魔界から遣わされた不老不死の犬、
ということなのだろうか。
でないとしたら、クローン犬なのか。
そういえば、近くに研究所があった。
小学生のとき、探検ごっこしていて
森の藪の中を突っ切ったところに、
悪の組織の研究施設のような
怪しげな建物を見つけた。
その異様な気配に鳥肌が立ち、
さっさと引き返した。
脳が本能的に封印していた記憶が
何十年ぶりに蘇った。
なにか関係がありそうだ。
だが調べてみる気など起きるわけない。
いまのほうが、そのヤバさが分かる。
変な気を起こしてはいけない。
あの記憶が蘇ってしまったこと自体すら
ヤバいのかもしれない。
小学校の通学路沿いにあるせいもあり、
教職員や地域の大人たちの間でも
“魔界”で通じるようになっている。
そこに、いつの頃からか、
犬が常駐するようになっていた。
首輪もなく鎖で繋がれてもないのに
そこから離れようとはしなかった。
いま思えば、
自分が小学三、四年の頃だった
ような気がする。
その頃は、ポチとかハチ公とか
各自が思い思い勝手に
ありがちな名で呼んでいたが、
五年のときには、
上級生や中学生が付けたのか、
魔界の番犬とか魔界犬という呼び方が
定着していた。
きのう、
ひさしぶりにそこを通った。
いた。まだいた。
驚きと懐かしさの感情が
ない交ぜになって押し寄せてきた。
もう老犬になっているはずなのに
見たところそれほどでもない。
…二代目なのかもしれない。
あるいは…、魔界犬は
年をとらないのかもしれない。
たしかに模様や耳の傷が
小学生のときに見ていたのと
変わらない。
この記憶には自信がある。
魔界から遣わされた不老不死の犬、
ということなのだろうか。
でないとしたら、クローン犬なのか。
そういえば、近くに研究所があった。
小学生のとき、探検ごっこしていて
森の藪の中を突っ切ったところに、
悪の組織の研究施設のような
怪しげな建物を見つけた。
その異様な気配に鳥肌が立ち、
さっさと引き返した。
脳が本能的に封印していた記憶が
何十年ぶりに蘇った。
なにか関係がありそうだ。
だが調べてみる気など起きるわけない。
いまのほうが、そのヤバさが分かる。
変な気を起こしてはいけない。
あの記憶が蘇ってしまったこと自体すら
ヤバいのかもしれない。