セミの幼虫の羽化を
見たことがある方は
たくさんおるだろうが、
骸骨が大仏へ昇華したのを
見た方はおらぬだろう。

ただの骸骨ではいかん。
光る骸骨でなけてはの。

また、大仏になるとはいえ、
奈良や鎌倉、そのほかあまたの大仏様の
ふくよかなお姿にはならん。
なにしろ、スカル大仏じゃからな。

骸骨が御仏のお導きにより
光を纏って、スカルでありながら
大仏として成仏する。

遠い昔のことじゃ、
偉そうな政治家先生と、
数々の業績を挙げた学者先生と、
徳の高いお坊様のお三方から
同時にまくし立てられたものよ。

約めて言えば、
いま申したようなことになる。

それよりもじゃ、
おぬしもセミの羽化をじっくりと
見届けてみたくなったのではないか。

セミの幼虫が地の底から這い出てくる
時節まで待つ気があらば、
酒を酌み交わしながら、
羽化をひっそりと見守ろうではないか。