鹿のカナコとアントの間に
子鹿が生まれた。

さっそく弟が名前を付けたがった。
みんなと相談するまえから
勝手にバンビと呼び始めた。

そんなベタなのはやめなさいと
姉が言った。

当の姉はピビンバと命名した。
ぼくは何も言えなかった。
動物たちの世話は
牧場の仕事で忙しい父母と祖父には
手を煩わせまいと
すべて姉がやっていた。
ぼくと弟もお手伝いをするにしても
所詮はお遊びにすぎなかった。

弟は幼稚園で子鹿が生まれた話を
披露したのだろう。
先生やお友だちと
何かしらのやりとりがあって
その名前の意味を知ったようだ。

弟は泣きながら帰ってきた。
なんで食べられちゃう名前にしたの!
と姉に掴みかかった。

もう名前はないわ。
お客さんが引き取りに来たから。

それを聞いてぼくも泣き叫び、
弟といっしょに姉のお腹を
げんこつで叩きつづけた。