昨日、某私鉄の各駅停車で
A駅から一駅となりのB駅まで乗った。

乗り込んで乗降口のそばに立ち、
外を眺める格好になる。

ホームが流れ去り、
電車が加速していくくらいで
ガラス窓にハエが
止まっているのに気が付いた。

ハエと聞いて、ふつうにイメージする
ハエよりは小さく、やや細長いハエ。

まだ止まっている。
電車はかなりの速度になり、
吹き飛ばされてもおかしくない。

もしかしてガラスが二重になっていて、
あいだの空間に入り込んでいるのか?
それならわかる。
しかし、このガラスは開閉ドアと
一体になっているガラスだから、
そんな隙間はないはず。

外側にいたら、かなりの風圧で
まだ平然としているように見える。

いや、一見そうみえてハエはハエで
かなり踏ん張っているのかもしれない。

だとすると、何のために?

…そうか、エサか。
そうだ、エサ場だな。

駅のゴミ箱やトイレ、
周辺の賑やかなエリアの
ゴミやトイレがお目当てなのだろう。

羽があれは、どこへでも飛んでいけるが
一駅の距離となるとハエにしてみれば
なかなかの距離。

もちろん、途中にいくらでも
エサにありつける場所がありそうなもの。

もしや、昨今はカラス対策で
ハエくん、ハエちゃんらも
巻き添えをくらっているのか。

ンなわけねえか、
ハエには逆のスケールメリットがある。

影響があるとしても
人間どもの衛生意識が多少高まっただけ、
あるかないか微妙なところ。

ま、カラス対策がどうであれ、
効率が悪いのたしかなようだ。
だから、駅間はスルーしたい。
人間もわざわざ火星を
テラフォーミングなどせず、
理想郷の惑星へ一気にワープしたい。

そんなふうに思い至ることができた
このハエ、進化形のハエか?
進化タイプのなかでも、
妊娠中のメスなのだろう。
身重で飛ぶのが億劫、
でもエサがふだんより必要。

駅のゴミ箱・トイレから
次の駅のゴミ箱・トイレへと
ハエがタダ乗りを繰り返して
エサ場を渡る、いわば渡り蝿。

そのためなら、
なによりも卵のためなら、
速度を上げた電車の側面で受ける風圧など、
耐えるに値しよう。

… … … … …
さっそく研究所に立ち寄り、
昆虫行動学系の論文を漁ってみた。
やはりあった。
まんま「タダ乗り行動」と
呼ばれているようだ。
ただし、そういうハエをひと括りにして
「渡り蝿」とは言わないようだ。