道端にカラスが死んでいた
それに気づいたのは、まだ20~30m手前だった
5mほど手前まで来ると、カァ~と鳴き声がした
死んだカラスが鳴くわけがない、近くにいるカラスだろう
辺りを見回して他のカラスがいるか探してみたがいなかった
死んだカラスのすぐ近くまで来た
カァ~と弱々しく鳴いた
こいつ生きていたのか
こっちに首をかしげ、パタッと羽ばたいてみせる
足にいろいろ絡まっていた
ゴミを漁っていたときに絡まったようだ
頭のいいカラスでもここまでになってしまうと無理らしい
とってやるのもひと苦労だった
カァ~と、先ほどよりはいくぶん張りのある鳴き声を残して飛び去った
数日後、雪の降りしきる晩のこと
インターホンが鳴った
出ると、道に迷ったから一晩泊めてほしいという
今どき、道に迷うかよ、ケータイやスマホのGPS機能でなんとかしろ
そうそう、今どきといえばテレビ番組でタレントが泊めろと押しかけるのもある
そのパターンか?
覗くと全身黒づくめ
タレントだからか?
いや、ロケ中だろ
そんな闇夜に溶け込むような格好はしないだろ
もう一つのパターンが思い浮かんだ
鶴がやったパターンのカラスバージョンだ
じつは、数日前の道端カラスを助けてやったときに、チラッと「鶴→女→機織り→大儲け」のパターンが脳裏に浮かんだ
例の話は、鶴だけにとどまらず鳥業界で広く出回っているのかもしれない
だとしたら、カラスが何をしてくれる?
黒い羽で黒い織物か?
高く売れるならいいが、そもそも機織り機がない
あと、カラスの得意技は何だ…?
やっぱりゴミ漁りだな
そうか、流しの生ゴミや食べ残しを処理してくれるのか?
あぶないあぶない
やらせているうちに恩返しのことなどすっかり忘れて調子に乗りださないとはかぎらない
料理が出来たそばから、いや、材料を出したそばから突っつきだすにちがいない
ドンドン、ガチャガチャ、ガシャン!
あれこれ考えているうちに玄関をぶち壊してきやがった
パン、パン!
発砲された
そうだった、そりゃそうだ
こいつらが来るのが先だよな
恩返しより仕返し
カラスを助けたのは、ヤツらの幹部宅を襲撃した帰り道だった
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(次回は、道端で芽生えたジェラシー)