監禁法人設立趣意書1＋2.5＋2.7

海外開拓推進本部の山田は、本部長から出張を命じられた。
表向きの出張先はタイ、洪水対策と移転先エリアの探索・選定を任された。
しかし、実際には日本の某所に潜伏し、社長を監禁するのが任務だという。
山田は新人研修を終えたばかりの、社内事情はおろか、実社会の右左すらおぼつかないいまどきの若者。おまけに研修時の評価はすべての項目で最低レベルだった。
その山田がこの部署に配属されることはありえないはずだった。
中川本部長からじきじきに声がかかったときは山田自身耳を疑った。
研修以降は毎日、コピー機とスキャナーにはりついているか、お茶を汲んだり、弁当やデリバリーの買い出しと発注、残業する先輩の夜食の買い出しと手伝いに明け暮れていた。
山田と同じ課に同期の女子社員も5人配属されていたがいずれも入社試験も研修もトップクラス。仕事らしい仕事をバリバリこなしていた。
我慢に我慢を重ねつつも、部長へ異動を直訴するか転職のタイミングを見計らっていた矢先の特別任務だった。
山田君、研修の評価な、本当は上から5番目なんだ。今までの雑務も、いわばテストだったんだ、入社試験より大事なテストだ。