何回言わせんだよ! でくのぼうめが!

す、すいません。

おめえの役なんかおめえじゃなくてもいいんだ。ただ、こんな山奥のロケだから替えようがねえじゃねえか!

あ、あのぉ…。

なんだ。

さっき、山から下りてきた山菜採りの爺さんが…。

爺さんがどうした。

中曽根元首相でした。

え…、それがどうした。いま関係ないだろ。そんなことに気をとられてトチってたのか、役者なんか辞めちまえ!

中曽根元首相がこんなとこにいるわけないじゃないですか。でもすごく似てましたよ。

この野郎っ!

もう、野郎呼ばわりさせませんよ。役者辞めましたから。いまからプロデューサーになりましたから。はいはい、監督さ~ん、仕事仕事!

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…とまぁ、逆ギレしてというか、逆ギレにしてもメチャクチャでしたね、いま思うと。現場にいた全員によってたかってボコボコされて、森の中に埋められてもおかしくない。

そのときの助監督さんがうまく機転を利かせてくれたとか。

ええ。彼がすぐさま私の立ち位置に来て、私の役を完璧に演じてみせたんですよ。「監督、これでOKですよね。さっさと本番行きましょう。日が暮れちゃいます」って。