なんとおっしゃいました、おじいさん。
針仕事をしていたおえいはとなりの部屋から聞き直しにきた。
…まあまあ、ぼそぼそ言ったと思ったら蛻の殻。出て行くときだけすばしこいんだから。
おえいは書見台に開かれていた黄表紙を棚に戻した。
どうせ、嘉助どのに相手をしてもらいに行ったんでしょうよ…。
あたしもおたきさんに愚痴を聞いてもらいにいこうかしら。