壱之介は幼少時に倉田家から多比岡家に婿入りした。
成人して先代を継ぎ多比岡龍太郎を名乗った。妻となる菊代はまだ八つだったため、身の回りの世話は、伴ってきた幼なじみの藤乃が行った。妾だが事実上の妻だった。婿入り後に藤乃との間に産まれた子は多比岡家の子となる。
隠居した先代は、普請道楽を始めた。茶の湯の心得もないのに茶室を作ったのである。
以来、しきりに客を招いているようだ。茶の師匠にご足労いただいて稽古をつけているのだと思った。
普請ではなくて助かったが、道楽は道楽だ。