再来月あたりの日曜、月曜にかけて6億稼げるタイミングが来そうだな。
強盗しても稼げますが捕まりますってか。
…にしても、盗られるほうも杜撰、盗ったほうも杜撰。どちらもセ込ムとかアル卒クに頼んどけよ。再保険ってヤツだよ。

萱野が新聞を読みながらつぶやいた。
くわえていた楊枝をプッと飛ばす。

美人秘書が素手で拾い、萱野の机の楊枝入れに戻した。べつに洗って使い続ける塗りものだったり、象牙だったりするわけではない。
昼休み終わり頃になると、ほぼ毎日繰り返される光景。
新入りは二度ギョッとする、それも恒例となっている。
楊枝を使い回すのはエコでも何でもない。この男、外食や中食だけでなく自宅での食事も割り箸を使い、これは使い捨てするのである。

以前、見かねて気を利かせた娘が金属製の楊枝と革の楊枝入れを父の日にプレゼントしたことがあった。

気持ちはうれしいが…。
小さい頃の愛娘は目に入れても痛くなかったが、もはや萱野にとって目に入れて痛くないのは楊枝だけだった。