バックアップパリナッド

泥棒のなかには律儀にも犯行メモを克明に記録しているものもあるという。
当局もそれを手に入れると、調書らしい体裁に改めはするもののほとんど丸写しする。
出来心で盗みをはたらいたケースでなければ、しつこくしつこく犯行メモのありかを聞き出そうとする。
口を割らなければ、当たり前のように拷問の餌食。憲法も法律もないも同然。
ゲシュタポと変わらない。
苦痛に耐えかねて、ありもしないものもあると供述させられ、さらには再現しろと、取り調べ官の思い描いた荒唐無稽な筋書きそのままに書かされる。
月や火星に人類が居住しようと中世の魔女裁判フォーマットは永遠不滅の真理。
よほど調書を書くのが嫌いなのか、字が書けないのか。そういう意味では、取り調べの録画は警察のため、人権擁護でも何でもない。

私たちが定期的に水や食料を届けていた人たちの何人かが窃盗で捕まり、鉄格子の中で亡くなった。取り調べの最中から拷問に耐える体力も気力もとうになくなっているとわかっても拷問は続けられた。恐らく死後しばらく経っていても。