彼はまだきっと生きているにちがいない。ただ、誰も彼の居場所を知らないだけ。
ところが、あるとき居場所を知っているという旅人がこの町にやってきた。
はじめのうちは誰も相手にしなかったが、数週間後にやってきた宣教師も同じような話を口にした。
町の者は大方、この二人の話を信じる気になっていった。
だがその矢先、あろうことか町の広場で二人の首が晒された。

居場所を知られたくない彼の仕業だと町中が思った。
そんな状況を知ってか知らずか、旅人がやってきた。居場所については何も口にしなかったが、先にきた宣教師の行方を聞いて回っていた。
宣教師の知り合いの巡礼者だと言っているが、町の者は過去のよそ者のことについては口を噤んだ。
旅人も、もう何度となく広場の晒し首を見ているはずだが、いまだ尋ね人と重ね合わせることなど思ってもいないのだろう。