デッヘゼッヘ漫遊記

いま外で何が起きているか、わからない。
何者かに拉致されて地下室のようなところに監禁されたようだ。おそらく数日、経っていると思われる。
手足を台に縛りつけられ、猿轡をかまされている。
室内にはインド風の香が炊きしめられていてむせるほどだ。
自分がなぜ拉致されたか分からないが、人質として扱うならカレーが出てくる気配もしないでもない。
私が諸国漫遊中だと知っていれば、なおさらだ。さぞかし珍しいカレーを食わせてくれるのでは…、こんな状況に置かれていながらオプティミスティックすぎる妄想が浮かんできてしまう。
ところで私が勝手に助さん格さんに見立てている連れのズッケラ博士とカグー船長はどこにいるのだろう。私と同じように別室に監禁されているのだろうか。
あるいは、別室でカレーを煮込んでくれているのかもしれない。カグー船長のシーフードカレーは絶品だからな、…いやいや妄想に傾いちゃいかん。
カグーはともかくズッケラが死んでなければ、いち早く異常を察知、真相を見抜いて助けに来てくれるはずだ。
そんなことを考えていると部屋の壁に激しい衝撃音がした。おそらく巨大なハンマーか重機でコンクリートを打ち砕いているようだ。