夜中に便所に行ったあと、水を飲みに台所へ行った。ついでに糠床の様子を見てみた。見たところでどうというわけではないが。
ただ、漬けたものがゾンビだけに気になる。我が家に代々伝わる秘伝の糠床なら封印できるという言い伝えが嘘か真か試しはじめて二日目だった。
漬けたのはキュウリとゾンビの右手。糠に右手を突っ込んで握手してみる。ピクリと反応はするが握り返してこない。ほど良い浸かり具合いだ。
試しに左手を入れてみた。バチンと払われ糠床から追い出されてしまった。もう少し漬けるかどうかは好みになる。
明日、弁当に詰めていくか。封印効果にしてもふつうのタッパーウェアに白飯と一緒にしてどうなるか試せる。おかずは柚子を利かせたサバの味噌煮にしよう。

昼休み、きょうは特に弁当を開けるのが楽しみだ。白飯に、ゾンビの腕肉の糠漬けと鹿肉の燻製。ゾンビとバンビでダジャレ定食だとクラスじゅうにふれ回る。
チャラ系もイケイケ系もヒキまくる。
独りネクロフィリアの郁美だけがボソッと呟く。
ダジャレは食えないけどゾンビは食べたい。半分、アタシの豚足と取っかえて。
お、食いねえ食いねえ、石松ならぬ郁美姐さん。
そのパロディは食えないわよ。…あ、これ、おいしい。
だろ。右の前腕の内側だよ。バンビのほうも食うか。
いい。生肉だったらほしいけど。