トラフグ一家の広場

五日間降り続いた雨のせいで広場は水浸しになった。まるでヴェネツィアだ。数年前に排水用の地下管路を埋設したがキャパを超えてしまったか、異物が詰まったか…。
そこへ軍のジープが5台やってきた。知った顔が1台から降りてきた。
お久しぶりです、大佐。とんだ災難ですね。
大佐は止めてくれ。退役してから、もう10年たつ。
いえ、自分からみれば、大佐はいまでも大佐です。
だったら、君はいまでも少慰かね。ヘルダー少佐どの。
こりゃ、参りました。
テラスに茶を用意しておくから、ひと段落ついたら、連中も連れてきてくれ。
ありがとうございます。早速、かかります。
少し離れた水没していない入り口から連中が入って5時間たつがいっこうに出てくる気配がない。
…7時間たつ。つてを辿って司令部に連絡を取れなくもないが。

……とうとう、夜が明けてしまった。もうこれは事故だ。つてではなく国防省の一般窓口に連絡をする。
こちらに部隊を派遣した記録や報告は入っていないとのこたえだった。
てっきり災害復旧で来てくれたかと思っていたが、もしやヘルダーは秘密行動の部隊展開を行っているのかもしれない。