この時間からB級アクションを見る羽目になった。
30人ほどの観客がすでに入っていた。その全員がなぜかポップコーンとコーラを手にしていた。
あははは、みんな同じってぇ…。
連れの香澄がつぶやいた。
なにかの団体客かもな、地方の青年団のツアーとか。
ほどなく「おせんにキャラメル」式の時代錯誤な出で立ちの売り子がポップコーンとコーラを抱えて俺たちの席に近づいてきた。
みんなこうやって買わせられたのね。
買わなきゃいい。
香澄は頭を肩に乗せてきた。
いちゃついているふりをしてやり過ごそうというのだろう、腕を回して肩を抱く。
いかがです、ポップコーンにコーラ。
ごつい体格で蝶野に似た顔つきのオヤジがニヤリと微笑む。
何が何でも売りつけるつもりか? しかもセットで2万円とぼったくられそうだ。
…この時間、当館からのサービスです。
わたしはお腹いっぱいだからいい。
では…。
蝶野はセットを俺に手渡した。
こういうことだったのね。
俺たちも青年団一行様の仲間入りだ。
わたしは違うモン、フフフ…。
こうしてやる。
ポップコーンを香澄の口に突っ込む。
ンムぅ…、やだもぉ。こんな時間に食べたら太っちゃうじゃない。