別の機関への転属を希望していたが、これほど突然辞令が下りるとは予想していなかった。その日のうちに横須賀の自衛隊基地から護衛艦で向かった。
乗艦早々、艦長室に招かれた。私のキャリアや任務からして、せいぜい副長に会えるかどうかだが…と訝ったが思い直した。乗艦する部外者はみな賓客としてもてなすのがこの艦長の主義なのかもしれない。
だが、それは楽天的すぎる幻想だった。五日間、そこから出ることは禁止された。ただ、艦長室だけあって居住性はいい。食事はサーヴされ、嗜好品も艦長の私物を提供してくれた。
いったい何のために? 監禁するなら、施錠ができる倉庫みたいな場所の方が適当だろう。中途半端な抵抗をされたくないからか? 何らかの事情で私を懐柔しなければならないこと、何かについて快く同意させることが大前提になっている気がする。