たいていの逃走者は、わざとサイレンを鳴らさず猛追する覆面パトカーに車を小突き回されれば音を上げる。
そのおかげか、追い立てられて事故を起こした容疑者は今のところいない。
彼はきっと、逃走者が事故ってしまうほど動転してしまう前に手を打っているようにも思える。逃走車を小突き回しはしても、まるでリフティングか蹴鞠のように他の物体に接触させない。
そんな芸当は、クレイジーというよりサイコロジスティックでさえある。いや、だからこそ、クレイジーなのだと言う者があれば反論する気はない。