翌日、工兵部隊の分隊長10名とシャムナッド隊の10騎を従えてフェルザニ地方へ下見にたった。
フェルザニはルザーニ山脈南麓の、ノグドが作る扇状地を中心に発展してきた。町が同心円状にいくつか散在しているが、比較的規模が大きいシドゥノグダはルザーニ北麓の隣国タラタワーム公国との交易で栄えている。
我々は朝から駆け続け、日没前にシドゥノグダ郊外に宿営した。乾期はまだふた月先だが草木の青さがかすれてみえる。

翌朝も早立ちでノグドの峡谷部に向かう。開削区間の最も手前には遊水池を設けたほうがよいという工兵隊長カウンの具申を容れて測量など十分な時間をとる。治水事業らしくなるうえ、局地戦略上も不可欠な作業ともいえた。彼はダミー工事がのちのち実際の治水灌漑事業の先行工事として取り組んでいる。工兵にしておくにはもったいない。