家に喰われるイメージ | 美術作家 肥沼義幸の制作日記

家に喰われるイメージ

 

 

昔から【家】を絵の中に描く事が多い。

心のどこかで自分の理想とするHOMEを求めているのかなぁ~

とも考えたこともあるが、果たしてどうだろう。

 

オランダで生活を始めてからは引っ越しと移動が多く、

今の自宅件スタジオに落ち着いたのは2014年の9月から。

良い隣人にも恵まれて、現在まで静かに制作できた事に

とても感謝している。

 

しかし、去年の自分はどこか精神的にオカシイ状態だったのか、

自分の存在が希薄になり、このままでは家に飲み込まれてしまう、

または喰われてしまうのではないかという妄想に悩まされた。

まるで楳図かずお氏や諸星大二郎氏の漫画に描かれる

【 得体のしれない恐怖 】のイメージ。

 

この妄想はおそらく以前に僕が外出中、ボイラーが故障して

吹き出した水が3階から1階まで天井と階段をつたって

水が流れ落ちる事件後に、自分の中で何か変なスイッチが

入ってしまったからだと思う。台風などの水害で家の中が

水浸しになってしまった映像をテレビで観るとこがあったが

実際にそのような状況に自分がおかれた事で、確かなリアリティを

得る事ができた。

 

ボイラー故障事件から時が経ち、ようやく自分の中にある家、

つまり、妄想から生まれた『 家に喰われるイメージ 』を冷静に

1度、絵にしてみたらどうだろうと思い立った。

『 家に喰われるイメージ 』と書くと恐い、もしくはネガティヴな

イメージを持ってしまうが、今考えるとボイラーから流れ出た水は

僕の中の【 不浄なモノ 】を浄化してくれたようにも感じており、

単純に恐いイメージだけではない事は確かである。

 

今の自宅件スタジオを引っ越す前に、じっくりと時間をかけて

木炭のドローイングで取り組むつもりである。