今、自画像を描く事 | 美術作家 肥沼義幸の制作日記

今、自画像を描く事

 

 

美大受験のために通っていた予備校以来、今まで自画像を描いた

ことはなかった。それは自分の顔を観つめ、キャンバスや紙に描く

行為に、いまいち面白みやリアリティが持てないからだった。

 

でも、ここ2年ぐらい自分の顔を鏡で見る度に「老い」を意識する

ことが多くなった。髪の毛も徐々に薄くなり、髭に白髪が増え、

下顎に肉もついて、シミも増えた。それは(やはり)残念な事では

あるが、顔を1つのモチーフとしてみれば、以前より少しは面白みが

ある事のように思えた。

 

そういえば、オランダの画家レンブラントとゴッホは頻繁に自画像を

描いていた。特にレンブラントは長年にわたり、自画像を描き

自己を見つめてきた画家だと思う。

 

モノタイプで自画像を描く。モノタイプは版画技法なので

紙に描いたイメージが鏡のように反転する。顔以外に普段よく描く

モチーフである魚や鳥、そして家を描いていく。

 

絵の世界にいる自分と現実に絵を描いている自分。

孤独でメランコリーで肉体の老いを感じながら、今日もまた1歩1歩

『 死 』に近ずいていく。絵を描く上で、自画像は(特に)正直に

描いていきたい。