カメレオンのように | 美術作家 肥沼義幸の制作日記

カメレオンのように

 

アッシャースレーベン市内。日々制作しているスタジオと宿泊している

アパートメントは約2キロ離れており、その中間地点にかなり年季の

いったペットショップがある。一度中に入ってみたのだが、たくさんの

生き物の入り乱れた強烈な臭いに圧倒され、このペットショップが

一見さんお断りなのだと理解して急いで外に出た。

アッシャースレーベンに来て早々に強烈な一発をくらってしまった

のである。

 

しかし、このペットショップの道路に面したウインドディスプレイから

2匹のカメレオンと1匹の美しい白蛇を観ることができ、興味を持った

僕はそれからスタジオへの行き帰りに彼等を観察する日々が始まった。

 

改めてカメレオンを観察すると彼等はたいへんユニークな姿をして

いる。ギョロリと動く目、カラフルな色彩のボディ、おまけに舌は

伸びるし、尻尾はくるりと丸まっている。そのユニークな外見ゆえに

外敵から身を守る術として擬態化する能力も手に入れた。

他の爬虫類と比べてみても、彼等の姿形は異彩を放っており、

生物の進化という側面からみてみても驚嘆せざるおえない。

 

カメレオンを観察しているうちに、少し自分と似ている部分が

あると思った。例えば、こうして外国で暮らしているとカメレオン

のように周りに自然にとけこむ術を覚えていく。

今の自分はいい意味でカメレオンのようにフレキシブル(柔軟)

にその場にとけこみ、絵が描ける術を得てしまったように思える。

それには自己改革という意味で自分を変化させていく必要が確かに

あったように思う。しかしまた、今まさに考えるべきことの1つに

カメレオンのような特別な個性が今の自分にあるのだろうか。

『 自分だけのスペシャルな何か 』もう一度、じっくりと考えて

みる必要性を感じている。