CPU年表【前半】1970年代マイクロプロセッサ・マイコン… 

1990年代前半 64ビットRISC の登場

CPUの分野では業務用向けに64ビットCPUが登場した。RISC CPUを採用したワークステーションはこの頃全盛時代を迎えた。パソコンの分野では 1990年代初頭に16ビットCPUから32ビットCPUへの移行が進み、本格的に32ビット時代に入った。それまでのパソコン用CPUでは、新型CPUが登場してから本格的に普及するまで4-5年程度の遅延が生じていたが、パソコン市場が拡大し競争が活発になるにつれて最新CPUが短期間のうちに普及パソコンに採用されるようになっていった。

32ビットCISC CPU。68000系の最後の汎用製品で、その後はPowerPCに役割をゆずることになった。

1990年代後半 クロック数競争

業務用 CPU の分野では、この頃、急速に能力を向上させてきたパソコンに押されてワークステーション市場を徐々に失っていった。代わってインターネット時代の到来とともに、業務用CPUは徐々にサーバ分野へと拡大していった。サーバ向けプロセッサではCPUの64ビット化は一段落し、高クロック化・マルチプロセッシングへと向かった。

パソコンCPUの分野では、1990年代半ばに Windows3.1Windows95 などの GUI OS が登場したことで、従来にまして高い性能のCPUが求められるようになった。一時はCPUの性能がソフトウェア環境の急激な変化に追いつかないため、CPUの性能を追い求めるスピード飢餓(その究極は自作パソコンユーザによるCPUのオーバークロックである)の状態も出現した。一方、1990年代には、インテル 486PentiumPentium III の時代に急激な性能向上が見られ、1990年代末頃になるとスピード飢餓の時代も徐々に解消していった。パソコン用CPUの最先端競争が続く一方で、ビジネス向け低価格パソコン市場の競争も激しさを増していった。この過程で x86系CPUの互換品を作っていたメーカーの再編が進み、NexGenを買収した AMD が勢いを伸ばした。1990年代末頃になると、CPUやグラフィックチップの分野から撤退したり事業を売却したりする動きも活発になった。

  • 1995年 IBM/モトローラ PowerPC 604
    32ビットRISC CPU。当時のパソコン向けCPUとしては卓越した演算性能を誇り、Power Macintoshの上位機種で採用されたほか、IBMのサーバ・スーパーコンピュータにも採用された。
  • 1995年 IBM/モトローラ PowerPC 603
    32ビットRISC CPU。低消費電力・低価格に特色があり、PowerMacintosh、PowerBookで採用されたほか、組み込み向けに広く使われた。
  • 1995年 サン・マイクロシステムズ UltraSPARC
    64ビットRISC CPU。
  • 1995年 インテル Pentium Pro
    32ビットCISC CPU。
    CISC命令をRISC的命令セット(μOPs)に変換して実行する、当時のトレンドをインテルが初めて採用したCPU。当時の先進的技術を全て盛り込んだP6マイクロアーキテクチャの設計プロファイルは、10年以上に渡って同社におけるプロセッサ設計の土台となる。
  • 1996年 MIPS R10000
  • 1996年4月 ヒューレット・パッカード (HP) PA-RISC8000
    64ビットRISC CPU。
  • 1997年 AMD K6
    32ビットインテル互換CPU。買収したNexGenの設計を流用している。
  • 1997年 IBMモトローラ PowerPC750/740
    32ビットRISC CPU。「PowerPC G3」とも呼ばれる第3世代 PowerPC。603譲りの低価格・低消費電力と、604を凌駕する演算性能をあわせもつ。PowerMacintosh G3、PowerBook G3、iMaciBookに採用されたほか、組み込み向けにも広く使われ、ニンテンドーゲームキューブWiiのCPUのベースになっている。
  • 1997年 サン・マイクロシステムズ UltraSPARC II
  • 1997年1月 インテル、MMX Pentium発表。
    32ビットCPU。マルチメディア用演算機能 (MMX) を搭載。
  • 1997年5月 インテル、Pentium II発表
    32ビットCPU。第6世代のコア。独自のカートリッジを採用するなど従来と異なる方向を打ち出したが、やや迷走気味になった。
  • 1998年1月 コンパックが DEC を買収
    アメリカ合衆国で情報産業の再編が進みつつあった中での大きな事件の1つであり、DECの保有していたStrongARMはインテルに売却された。
  • 1998年 IBM、 PowerPC750L 世界初の銅配線で製作されたCPU。消費電力の削減が可能になった。
  • 1998年 AMD K6-2
    32ビットインテル互換CPU。低価格パソコン市場で健闘しシェアを伸ばした。インテルが Celeron を登場させるきっかけになった。
  • 1998年 インテル Celeron発表。
    AMD K6-2 に対抗した。Pentium に対するローエンド用CPUの位置づけだったが、実質的にはメインストリームのCPUとなった。
  • 1999年2月 ISSCCにて、ソニー・コンピュータエンタテインメントが"Emotion Engine"を発表。世界初の完全128ビットCPUであり、プレイステーション2向けに開発された。
  • 1999年 インテル Pentium III 発表
    32ビットCPU。Pentium IIに高クロック化を意識してパイプラインを長大化する改良を施し、マルチメディア用演算機能を拡張したSSEを追加したもの。
  • 1999年 AMD Athlon
    32ビットCPU。インテル Pentium III と激しい性能競争を繰り広げ、一時、クロックではインテルCPUを上回った。
  • 1999年 モトローラ XPC7400を出荷。
    32ビットRISC CPU。128ビットSIMDAltiVecを搭載し、「PowerPC G4」と呼ばれる。Power Mac、PowerBookのCPUとして採用されたほか、ルーターなど組み込みシステム向けにも広く利用される。

2000年代前半 クロック数競争の終焉とマルチコア時代の到来

1999年にパソコン分野のCPUクロック競争は激しさを増し、インテルAMDは互いに前倒しでより高い周波数のCPUを発表する熾烈な競争を繰り広げた。そして、ついに2000年春にはCPUの周波数はAMDがわずか先に1GHzの大台に到達した。周波数競争がヒートアップしてピークに達していた頃、奇しくもほぼ同じ時期に株式市場ではITバブルの最盛期となり、崩壊が始まろうとしていた。1GHzの大台への到達では先んじたAMDだが、これ以降クロック競争に見切りをつけ処理効率を重視したCPUを展開していく。

それとは反対にインテルは、より高クロックを重視したPentium 4を開発した。高クロックという分かりやすいアピールを行うPentium 4に対して、AMDPentium 4との性能比較のためにAthlon XPモデルナンバーを導入した。クロックの増大に歩調を合わせて消費電力の増大も続き、モバイルパソコン向けに専用のプロセッサを設計することが行われるようになった。

2002年にはPOWER4によりサーバ分野でマルチコアCPUが導入された。

2003年には、PowerPC 970Athlon 64により、パソコンにも64ビットの時代が到来した。また、この頃にAMDはマルチコアへの転換も予期して、Athlon 64にはデュアルコアへの拡張を意識した設計もなされている。

2004年末、インテルのPentium 4が採用していたNetBurstマイクロアーキテクチャは、発熱と消費電力の増加が抑えられず、ついに一般向けCPUの周波数が3.8GHzで頭打ちになった。インテルは周波数向上をあきらめ、64ビット・SIMD・プリフェッチ・マルチコアなどの技術で性能向上を図ることになる。これに関連して、インテルもAMDに続きプロセッサー・ナンバーを導入することになる。インテルは開発中のCPUをキャンセルしてクロックあたりの性能を重視した路線への転換を余儀なくされることとなった。

業務用CPUでは、x86ベースのPCサーバが広がり、インテルがIA-64をリリースして本格的にサーバCPUの牙城へと乗り出した。高性能CPUを製造するための投資が莫大なものとなり、従来ワークステーション分野やサーバ分野をリードしてきたRISC CPUのメーカーも、他社との提携を行ったり組み込み分野に重点を置くなどの方向転換を行った。

  • 2000年 2000年問題、大きな混乱なし。
  • 2000年 サン・マイクロシステムズ 、UltraSPARC III
  • 2000年1月 米Transmeta Crusoe発表
    内部的にはVLIWだが、コードモーフィングと呼ばれる命令変換技術で、x86系CPU互換を実現する。低消費電力を指向し、モバイル分野を意識したCPU。高密度サーバにも多く採用された。
  • 2000年3月 ソニー・コンピュータエンタテインメントEmotion Engineを搭載したプレイステーション2を発売。世界初の128ビットCPU搭載システムであった。
  • 2000年3月 AMD Athlon の動作周波数が1GHzに到達。
  • 2000年10月 IBM、RS64-IVを発表
    64ビットPowerPCマイクロプロセッサ。市場に出回った製品としては初めて同時マルチスレッディングを実装した。RS64ファミリとしては最後の製品であり、その後はPOWER4に道を譲ることとなった。
  • 2000年11月 インテル Pentium 4 発表
    32ビットCPU。高い周波数の動作を強く意識。マルチメディア用演算機能を拡張したSSE2を搭載。
  • 2001年5月 インテル Xeon 発表 サーバ用
    32ビットサーバ用CPU。
  • 2001年5月 インテル Itanium 発売開始
    初めてIA-64アーキテクチャを実装したCPU。構想は1999年10月に発表していた。新開発のIA-64命令に加えて、IA-32命令デコーダを搭載した64ビットサーバ用CPUで、他社のRISCプロセッサの置き換えを狙った。
  • 2002年 IBM POWER4
    サーバ/メインフレーム用CPU。業界に先駆けて対称型マルチコアを採用した64ビットプロセッサで、その設計は後のPowerPC 970のベースとなった。
  • 2002年5月 ヒューレット・パッカード (HP) とコンパックが合併
  • 2002年4月 インテル Itanium 2 発売開始
    64ビットサーバ用CPU。メモリアクセス機能を改善、演算ユニットを増加させ性能を向上させた。IA-32性能を改善したものの、同時期の80x86プロセッサの性能には遠く及ばず、後継のプロセッサではIA-32命令デコード機能が削除された。
  • 2003年3月 インテル Pentium M 発売開始。
    32ビットCPU。モバイルパソコンに特化したプロセッサであった。
  • 2003年4月 AMD Opteron 発表。
    x86を独自に64ビットに拡張したアーキテクチャーAMD64搭載。
  • 2003年8月 アップルコンピュータがPowerPC G5 (PowerPC 970) を搭載したPowerMac G5を発売。世界初の64ビットパソコンであった。
  • 2003年9月 AMD Athlon 64 発表。
AMD64を搭載したパソコン向けプロセッサ。
同時マルチスレッディング(SMT)機能を搭載し、ワンチップで2つのスレッドを実行可能。
  • 2004年 IBM POWER5
    サーバ/メインフレーム用64ビットCPU。マルチコアに加えて、同時マルチスレッディング (SMT)などの新技術を投入し、ワンチップで4つのスレッドを実行可能となった。
  • 2004年6月 インテル Intel 64搭載のPentium 4、Xeon発表。
  • 2004年8月 HP Alpha EV7z 発表。
    最後のAlphaプロセッサ。1.3GHz。
  • 2004年10月 サン・マイクロシステムズ「UltraSPARC IV+」
    UltraSPARC IVプロセッサのデュアルコア版。