超心理学 Ⅲ 研究者の態度のマッピング 研究・実験 

 

実験結果に関わる要因

超心理学における実験では、以下の要因が重要とされている。

ヤギ・羊効果

超心理学実験の得点は、超心理現象を信じる者(ヒツジ)が被験者の時は高く、超心理現象を信じない者(ヤギ)が被験者の時は低い傾向がある。この現象は偶然には1万分の1未満の確率でしか起きないにも関わらず、集合実験でも個別実験でも検出された。この効果はジョン・パーマー、ガートルード・シュマイドラー、T・R・ローレンスなどの超心理学者らの実験によって検出された。パーマーによれば、実験が成功するという状況に被験者が「心理的快適さ」を感じていた場合、ターゲットを当てやすいとされる。[37]

山羊・羊効果」も参照

実験者効果

全く同一の実験であっても、実験者がだれであるかにより結果に違いが出ることがある。これを実験者効果と呼ぶ。「ヤギ・羊効果」は被験者側の信念が影響する例であるが、実験者側の信念も実験に影響することが広く知られている。 懐疑論者のリチャード・ワイズマンと超心理学者のマリリン・シュリッツが実験者効果を調べる実験を行ったところ、全く同じ条件の実験であるに関わらず、シュリッツが行った実験のみに優位な結果が得られた。ガートルード・シュマイドラーの実験では「独善的で冷たく自信過剰」な印象の実験者の結果が失敗しやすいという結果が出た。また実験者の妻が入院している期間のみ著しくスコアが低いという結果が出た実験なども見られる。[38]

自発的想像傾向

自発的想像傾向とは「心のうちに自然に現れるイメージを積極的に求め、重要視する傾向」のことである。ジョン・パーマーの実験によれば、自発的想像傾向はESPが発揮されるについて重要な性格傾向であるとされる。こうした傾向を持つ被験者が、社会心理的に快適な状況の実験に参加すれば成功しやすいとされる。またフィオナ・シュタインカンプの実験では「外向性が高く、神経質傾向が低く、知能が高い」被験者はESP得点が高い傾向が見られた。そうした被験者は社会心理的快適さを得やすいため、と考えられる。[38]

不正防止と科学的な方法

不正行為とその防止

「超心理学の実験では学者によって"でっちあげ"が行われている」といった批判的な見解を示す人もいた。「レヴィ事件」や「ソール事件」など、歴史上そうした事件は存在した。しかし、1970年代後半以降の超心理学上のデータについては(ガンツフェルト実験メタ分析の結果)でっちあげ説は当てはまらない、とされる。[38]

お蔵入り効果、全試行の記録、実験のメタ分析

超心理学を批判する者からは「お蔵入り効果」が生じている可能性が指摘されることがあった。「お蔵入り効果」とは、(超心理学に限らず自然科学の実験全般で起きる可能性があるもので)研究者が望みの結果ではない実験("失敗"の実験)は報告せず「お蔵入り」にしてしまい、望み通りの結果が出た実験のほうばかりを報告すると基礎データに偏りが生じ、結論にも影響する、ということである。この問題は超心理学で初期から指摘されていたが、1974年からガンツフェルト実験メタ分析(複数の研究報告をまとめて、全体の傾向を分析する手法)が発展するにつれ、これらの実験でこの効果が生じている可能性は否定されるに至った。メタ分析の結果、失敗した実験もお蔵入りされることなく報告されている状況が判明したのである。[38]

仮説群

超心理学では、いわゆる「心霊現象」や臨死体験などの理解のしかたに関して、いくつかの仮説がある。

超ESP仮説では「死後生や霊魂の存在の証拠とされる心霊現象も、ESPや超能力によるものだと見なすことで、霊魂を想定しなくても説明可能になる」とする[39]。これと対立するサバイバル仮説では「肉体の死後も何らかの存在が存続し続けていてそれが様々な超常現象を引き起こしている」とする。

懐疑的な見解と活動

ロバート・キャロル

ロバート・キャロルは『懐疑論者の辞典』(査読を欠いた、ロバート・キャロルによる個人的な本・サイト)において「審読制のある超心理学の専門誌も少なくとも6誌ある。しかし、この研究分野の特徴は詐欺や欺瞞である。きちんと比較実験を立案して、統計データを解析する能力にも欠けている。」[40]と述べた[41]。また、「スーザン・ブラックモアのように、何年たっても超常現象の有意に支持する結果が見つからず、研究をあきらめてしまった超心理学者もいる」と書いた[40]。 また肯定的結果を得たと主張する超心理学者が、サイの存在を支持しない研究結果をわざと無視して自分の研究結果を正当化してしまうことも多い、とし、ラインも自分の信念を支持しないデータは理由を付けて捨てていた、とした[40]。(→#お蔵入り効果)

ランデ

ダグラス社の取締役会会長のジェームス・マクドネル (James McDonnell) により50万ドルの出資によって1979年に設立されたマクドネル超能力研究所 (McDonnell Laboratory for Psychical Research) という、おそらく世界で一番資金のある超能力研究所があった。この研究所の所長であるピーター・フィリップス (Peter Phillips) 博士に、超能力実験においていかにイカサマ師のトリックを見抜くか、マジシャンジェームス・ランディが11ヶ条の助言を送り、また要請があれば無償で実験に立ち会うことも申し出た。ところが、ランディの申し出は断られ、助言も無視された。封も開けられず手紙は送り返されていたという。これに怒ったジェームス・ランディはある計画を立てた。「プロジェクト・アルファ英語版)」である。

ランディはこの研究所に2人の若いマジシャン Steve ShawとMichael Edwardsを送り込み、自分達に超能力があると研究所スタッフに思い込ませることに成功し、研究は彼らがマジシャンであることが暴露されるまで3年間続き、金属を曲げたり念写やテレパシーなどの実験をしても研究所スタッフは誰一人それが手品であることを見抜けなかった、という。2人がマジシャンであることが暴露された2年後の1985年に研究所は閉鎖された。

その後ランディは、「超能力を目の前で実証することが出来たなら100万ドルを進呈する」という企画を行っている。ランディのほうは、「これまで300人の「超能力者」と名乗る者たちが、100万ドルを求めてランディに挑戦してきたが、ことごとくそのトリックを暴いたので、いまだ誰ひとりとして自慢の超能力を実証したものはいない」と言ってはいるものの、ランディのこちらの企画に関しては、ランディのやり方にも問題があるようで、様々な批判がされている(en:One Million Dollar Paranormal Challenge#Controversies and claimants)。

 

研究者となっている人物、および進路としての超心理学

人物