2007-2008の世界食料価格危機Ⅲ米国におけるバイオ燃…
土壌と生産性の喪失
ブルース・サンドクイスト[60]は主に土壌の浸食、地下水の枯渇や都市化のため、毎年巨大な耕作可能地が失われていると指摘している。彼によると、「毎年60万km²もの土地が劣化しているため、その土地は生産性を失い、荒地になっている」といい、そこまで劣化していない土地も穀物の生産に問題を抱えているという。
それに加え、農業の生産活動は地下水の枯渇によっても失われている。中国北部では特に再生不可能な帯水層が枯渇し、現在穀物の生産に悪影響を与えている。[61].
都市化は耕作地減少の他の、小さな、難しい要因であるとみられている。[62].
空気中のオゾン量の変化
食料価格危機の環境的な要因として空気中のオゾン量の変化が可能性として挙げられる。植物は空気中のオゾン量の変化に敏感に反応することが知られており、小麦や大豆のような重要な穀物の減産は空気中のオゾン量の増加の結果であるのかもしれない。中国の長江デルタ流域でキャベツと同じアブラナ科アブラナ属であり、中国で利用される植物油の3分の1の原材料であるセイヨウアブラナを利用して空気中のオゾンの量の変化が植物の発育にどう影響を与えるかを調べる研究が行われた。高濃度のオゾンを含んだ室内で育てられた植物は通常と比べて10%から20%大きさと質量が減少し、種と油も同様に減少していた。[63]
開発途上国への影響
2007年から2008年にかけて、国際的に主要な穀物価格が劇的に上昇した。小麦の国際市場価格は2007年2月から2008年2月にかけて倍増し、1ブッシェル当たり10米ドル以上になった。[64]コメの価格もこの10年で最高の価格に達した。いくつかの国では牛乳と肉類の価格が倍以上になり、大豆は2007年12月にこの34年間の最高価格を記録し、[65]トウモロコシの価格も劇的に上昇した。
2007年、開発途上国の食料の輸入の合計額は25%上昇したとみられている。海外開発研究所の研究員はこの問題が食料援助の減少を招くことを示唆した。食料援助は量ではなく予算で運営されているため、食料価格の上昇は世界食糧計画が現在の計画を維持するためには新たに5億ドルを必要とすることを意味する。[66]
中国やブラジル、インド、インドネシア、ベトナム、カンボジア、エジプトなど主要なコメ輸出国は国内の需要を満たすためコメの輸出に厳しい規制を課した。[67]逆にアルゼンチン、ウクライナ、ロシアとセルビアを含むいくつかの国では小麦や他の食料の輸出に対し高い関税を課したりブロックするなど市場の孤立化に努めたため、輸入国はさらなる食料価格の上昇に見舞われた。そして北朝鮮では2008年の6月に政府の職員が「生きることはもはや困難である。国民は皆死につつあるようだ」と述べるまでに至った。[68]しかしこの国はこの困難な時期にもかかわらず食料を完全に支援に依存している。[69]
農家への影響