ESCO事業(Energy Service Company…

デメリット[編集]

クリームスキミング[編集]

ESCO事業者は、 (顧客が自身でも容易に実施できるような) 投資回収率の良い省エネルギー技術を主に提案し、 (顧客が望むような) 回収年数の長い技術や、省エネルギー効果の計測・検証が面倒な技術については着手しない傾向がある。 これをクリームスキミング (いいとこ取り) という[4]。 この場合、ESCO事業では十分な省エネルギー効果を達成できないこととなる。

事業契約の制約[編集]

契約期間中は、ESCO事業契約の制約を受けるため、顧客 (および事業者) の意志を拘束し、組織運営や経営計画に支障となるおそれがある[1]

ESCO事業は顧客に対して省エネルギー効果を「保証」するものであることから、その効果を明確にするために、エネルギーの使用にかかる前提条件を契約で定め、これに基づいて削減予定額や保証額を定めることとなる。 したがって、契約期間中に、この前提条件に変更を生じる場合 (例えば、顧客の都合で別の改修工事を行うなど) には、契約条件の見直しと、予定額や保証額の再設定が必要となる[5]。 これらの見直しには、顧客側にも多大な労力・負担を生じ、あるいは顧客が望む経営計画の変更などが困難になる場合も想定されることから[6]、ESCO事業の導入検討にあたっては十分な注意が必要となる。

その他[編集]

ESCO事業により設置された省エネ設備については、これを顧客の所有とせず、名目的にESCO事業者ないしリース業者の所有とすることで、顧客の資産の外部化 (オフバランス化) が図られるとし、かつてはこれがESCO事業のメリットの一つであると説明されることがあった。

オフバランス化とは、企業会計上のトリックの一つで、リースによる設備等の資産調達を売買扱い (オンバランス処理) とせず賃貸借扱い (オフバランス処理) とすることにより、貸借対照表 (バランスシート) に資産を載せないという処理方法である。 外形上、資産が圧縮されたように見えることから、資産利益率 (ROA) を向上させるなど、企業の外形的な価値を高め、資金調達などの取引に有利になるとされた。

しかし、実態として割賦払いによる資産購入であるものを賃貸借扱いとする解釈にはそもそも合理性がなく、投資家・債権者の判断に支障をもたらす粉飾決算の手口の一つとも見られることから、全世界的な傾向として、リースを利用したオフバランス取引は認められなくなっている。

リース業界の抵抗により対策が立ち遅れていた日本においても、国際会計基準への整合を図るべくリース取引に関する会計基準が改正され、2008年4月以降、すべてのファイナンス・リース取引に係るオフバランス処理が認められないこととなった。 また、一部の例外 (オペレーティング・リース) についても、近い将来、国際基準に合わせて同様の取り扱いとなる見通しである。

このため、実際に一部の上場企業では長期のリース契約を結ばない方針となっている[7]

リース取引に関する会計基準」および「日本におけるリース」も参照