博士 Ⅳ【中】博士号の種類/1991年改正以降
博士論文公刊の義務
なお、日本では、博士論文は国立国会図書館への寄贈が求められ(納本の対象ではなく義務ではない)、取得後一定期間内に公刊することが義務づけられており、非公開に準じたレポートではない[8]。国立国会図書館と国立情報学研究所が作成している「博士論文書誌データベース」で国内の大学で授与されている博士論文の検索ができる。
博士学位の取得方法の意義と問題点
![]() |
この節には独自研究が含まれているおそれがあります。問題箇所を検証し出典を追加して、記事の改善にご協力ください。議論はノートを参照してください。(2015年4月) |
博士の学位は、明治・大正期において「末は博士か大臣(大将)か」と言われた程、信頼の高い称号であった。現在でも博士の学位は、日本の学術研究の指導的立場に立つ人材の育成、国際機関などに人材供給をしていく上で大きな意義を持つ。[独自研究?]
所定の在学期間(3年間)以上在学し、修了に必要な単位を全て取得してはいるものの、学位論文だけが完成しないまま就職することも多く、こうした場合「満期退学」又は「単位取得退学」と称する場合がある。文部科学省中央教育審議会の報告書では「課程の修了に必要な単位は取得したが、標準修業年限内に博士論文を提出せずに退学したことを、いわゆる『満期退学』又は『単位取得後退学』などと呼称し、制度的な裏づけがあるかのような評価をしている例があるが、これは、課程制大学院制度の本来の趣旨にかんがみると適切ではない」とし、これらの名称の使用に対しては否定的な見解を示している[1]。
在学年数を越えて大学院に留まる場合は研究生として在籍するケースもある。また、2005年の文部科学省中央教育審議会において文部科学大臣への答申の中で博士課程に社会人コースを設置し、社会経験にて実績のある人物の場合は1年間の在籍期間中に学位取得を志すことができるようにすべきだとされた。つまり、大学院の博士課程に社会人コースが設置された場合、1年間の修学期間で博士号を取得することが可能となる。
近年では、博士号は研究者の最終目標ではなく始発点との考えが広まりつつあり、とくに2001年の学位規則改正後は、博士課程が拡充されるとともに、課程の修了によって学位を授与するという教育機関としての本来の原則にしたがって、在学中に論文の執筆と申請および合否判定を行う方向に大学院指導も変化してきている。また在学中の博士号の取得が困難であると日本の大学生や外国人留学生が日本の大学院を敬遠し海外の大学院での学位取得を目指して流出することもある。
その結果として、従来は必ずしも明らかでなかった博士号の取得に要請される研究業績の客観的条件の基準を各大学で設けたり、語学試験や事前審査などを通じた博士候補の認定など、学位授与にかかる一連の過程が明文化され、在籍する学生にとっても計画的な研究や目標の設定が可能となった。学位授与の客観的条件については各分野により違いがあるが、たとえば、博士論文提出までに学会での発表を行い、査読付き投稿論文を執筆するといった業績を博士課程在籍中に挙げることが、博士論文を提出し審査を受ける要件となっている場合が多い。
他方、このような政策は博士号の取得者を増加させ、従来は碩学泰斗の証とみなされることの多かった博士の価値の低下[9]を招き、博士号を有しながらも定職に就けないオーバードクター問題を発生させている。また、博士号を有しながらも定職につけないのは、需要と供給、そして現在の日本の大学をとりまく現状とのミスマッチから起こっているのも大きい。このような状況の下、文部科学省は2009年6月5日、第2期の中期目標素案作りが進む各国立大学に、大学院博士課程の定員削減を要請した[10]。