ゲームの構成要素
ゲーム理論ではさまざまな現象や問題がゲームとして定式化されるが、ここでいうゲームとは1組のルール(英: a set of rules)のことを指す[57]。すべてのプレイヤーが他のすべてのプレイヤーもルールを完全に知っていることを相互に認識し合っているゲームを情報完備ゲーム[58]とか完備情報ゲーム[59](英: game with complete information)といい、情報完備ゲームのルールを共有知識(英: common knowledge)という[58]。他方、ルールがプレイヤー間で共有知識でないゲームを情報不完備ゲーム[58]とか不完備情報ゲーム[59](英: game with incomplete information)という。本節ではゲームを定義するルールの代表的な構成要素であるプレイヤー、戦略集合、利得関数、情報構造、特性関数について解説する。
表現形式 | 構成要素 | 表現可能なゲーム | |||||
プレイヤー | 戦略集合 | 利得関数 | 情報構造 | 特性関数 | 協力ゲーム | 非協力ゲーム | |
提携形ゲーム | ○ | × | × | ○ | ○ | × | |
戦略形ゲーム | ○ | ○ | × | × | ○ | ○ | |
展開形ゲーム | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ |
プレイヤー
ゲーム理論では分析の対象となる意思決定主体をプレイヤー(英: player)と呼ぶ。プレイヤーは、あらゆるゲームのモデルに登場する基本的な構成要素であり[60]、プレイヤー集合はしばしば{\displaystyle N}によって表される[41][43]。ゲーム理論におけるプレイヤーは労働者[61]、投資家[62]、投票者[63]、官僚、テニス選手[64]といった個人だけでなく、企業[65]、クラブ[65]、政党[65]といった組織、さらには国家、神[66]、シカ[67]、植物[68]などのような人間以外の意思決定主体にまで多岐に渡る。ゲーム理論においてはプレイヤーの人数が重要であり、ゲームを定義する際にはプレイヤーの人数を明示する必要がある[69]。プレイヤーの数に応じて2人ゲーム、3人ゲーム、 n 人ゲームなどと呼ぶが、時にはプレイヤーの人数が無限の場合も考えられる[65][69]。
ゲームの中に意思決定主体の選択によって影響されることのない不確実性がある場合、その偶然メカニズムは自然(英: nature)と呼ばれるプレイヤーとして定式化され、自然が選択する手番は偶然手番(英: chance move)と呼ばれる[70]。ここでいう自然の例としては、天気[71]、スポーツの試合前に行われるコイントス[51]、企業の研究開発の成果[72]、親の人格の良し悪し[73]などが挙げられる。自然はしばしば「0人目のプレイヤー」として定式化される[51]。
展開形ゲームにおいてはゲームの木(英: game tree)を構成する手番(英: move)の「分割」としてプレイヤーが定義される[51]。展開形ゲームでは各手番において何れか1人のプレイヤーが選択をするが、手番の分割として定義されるプレイヤー分割(英: player partition)によって各手番においてどのプレイヤーが意思決定を行うのかが指定される。