上官はバーチャル。米軍が人間の兵士にアドバイスを与えたりするアバターを開発中(アメリカ)

2015年06月24日 ι コメント(51) ι 知る ι サイエンス&テクノロジー ι #

 フルメタルジャケットめいたハートマン軍曹も、バーチャル化される時代がやってくるようだ。 米軍は、兵士と真摯に向き合い、耳を傾けてくれる上官アバターを開発中だという。

 その目的は人間とロボットが同じ言語で会話し、混乱しがちな戦場においても円滑なコミュニケーションを図る手助けをすることである。インタラクティブな仮想人間は、兵士の指導者として、リーダーシップを教えたり、アドバイスを与えることが可能なほか、未来の戦場においては人間がロボットや無人ビークルとのコミュニケーションを図るうえでも役に立つ。

 


 これは、米国陸軍研究所(ARL/US Army Research Laboratory)と南カリフォルニア大学創造的技術研究所(ICT/Institute for Creative Technologies)の共同プロジェクトで、人間と機械が自然言語や文章、画像、動画を使ってコミュニケーションを図る「柔軟なマルチモードを使った人間とロボットの会話」を目指している。

 その狙いは、リアルなアバターを利用して、より没入感のある訓練環境を提供することだ。ARLのローレル・アレンダー博士によれば、精神的にも肉体的にも最適なパフォーマンスを兵士に発揮させ、部隊の勝利に貢献するうえで、こうした訓練環境が活きてくるという。

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 インタラクティブ映像による人間は、指導者やカウンセラーなど、様々な役割を担うことができる。戦場でのリーダーシップを教えたり、自殺、強姦、嫌がらせといった問題解決を主眼とするものもある。現在は、アバターの会話、理解、動作、容姿などの改善が行われており、これらはあらゆる技術に大きなインパクトを与えることになるという。

 例えば、ICTのエリーは、笑顔、しかめっ面、視線の動き、ボディランゲージなどを認識することで、人間の感情を読み、それに対応することができる。また、”彼女”は、会話の内容を分析することで、話を促したり、共感を示したりするタイミングを決定することもできる。

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 エリーは、ICTのシムセンセイ(SimSensei)プロジェクトの一環として、600人以上と面接した。このプロジェクトの目的は、鬱や心的外傷後ストレス障害など、兵士の能力を弱める症状を患った人間を特定することである。”彼女”は有能であり、最新の調査では、エリーと話した人は、人間相手のときよりも本音を話すことが多いことが明らかとなっている。

 ICTでは、2000年以降、こうした人と仮想人間との目的志向のコミュニケーションを研究してきた。ここで行われた人間の会話の研究、そのコンピューターモデル開発、会話システムの構築といった基礎研究が、軍の技術に応用されている。

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 スター軍曹という別のアバターは、陸軍のキャリアについて質問に答えることができる。また、通信士として、定期通信やデータ入力作業から人間を解放する可能性もある。

 こうした技術開発は、将来的に人間の兵士がロボット兵や無人ビークルとやり取りする場面をも視野に入れている。人間と機械が会話し、互いに理解し合うツールと技術を開発することで、コミュニケーションを円滑にすることはもちろん、精神面でのサポートにつながる個人情報や状況認識のための情報などの共有が図れるようになるという。

 人間とコンピューターの相互作用を研究することで、未来の技術への道筋を作っているのだそうだ。

via:dailymail・原文翻訳:hiroching