空飛ぶ円盤を作るのはそう簡単なことじゃなかった。失敗した10のUFOプロジェクト(前編)

2015年05月21日 ι コメント(41) ι 知る ι サイエンス&テクノロジー ι #

 

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 UFO(未確認飛行物体)といえば、SF映画などで見る、円盤型の飛行物体を思い浮かべる人が多いだろう。世界各国では、秘密裏に空飛ぶ円盤の開発プロジェクトが進められていたようだ。

 そしてどうやら、円盤を垂直離着陸で浮かせ、それをさらに飛ばすことは我々が考えている以上に難しいらしく、その計画はことごとく失敗することとなるのである。でもって当時の人々は、極秘にテスト飛行が繰り返されていたそれらのプロトタイプを目撃し、「ウチュウジン・キタ!」と恐れおののいていた可能性が否めないのだ。

 それでは、かつて秘密裏に開発が進められていたものの、失敗しちゃった10のUFOプロジェクトを見ていくことにしよう。

 


 第一回目は10位から6位までだ。
 

10. プロジェクト1794(アメリカ:1950年代~1961)

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 1950年代半ば、米国では、人々の度胆を抜くプロジェクトが進行していた。2012年になってようやくその詳細が一般公開された”プロジェクト1794”は、カナダの航空会社と米軍が「画期的な戦闘機を作る」というゴールを目指して開発が進められていた極秘プロジェクトだ。

 公開された情報にある設計図を見るとその姿はまさしく円盤型の飛行船である。ということは、1950年代半ばに空を見上げてUFOを見た、と恐れおののいていた人々が、実際に見ていたのはこのプロジェクト1794の飛行船だった可能性も高いのだ。

 プロジェクトの大きな目標としては、垂直離着陸ができて、上空31キロメートルの高さを、マッハ4(時速4600キロメートル)の速度で飛行する機体を作る事だった。

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 このプロジェクトは1961年に中止となった。何故なら、プロトタイプは垂直離着陸もままならず、最高速度もたった時速57キロしか出なかったからだ。冷戦時代、せめてプロジェクトの設計図だけでも、ソビエト連邦に対する脅威とならないか期待されていたが、プロジェクトの設計図自体あまり日の目を見る事が無く、物置の奥の方へとしまわれてしまった。

 

9. アブロ・カナダ VZ-9 アブロカー(アメリカ:1958年)

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 上記、プロジェクト1794のメンバーが次に作り上げたのが、VZ-9 アブロカーである。カナダの航空機メーカー「アブロ・カナダ」から名前を付けられたアブロカーは設計の段階ではロマンにあふれていた。

 ターボエンジンによる垂直方向に対するジェット噴射によりクッションのような風を地面に向けて叩き付け、ホバー中に垂直の噴射の照準を変える事で前進する機体だ。

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 アブロカーは元々カナダの研究者たちが1952年より行っていたプロジェクトの産物であったが、行き止まりを感じた彼らは、1958年にアメリカ空軍に助けを求めた。ようやくできたプロトタイプで、幾つかのテスト飛行がオハイオ州にあるライト・パターソン空軍基地で行われた。

 今となって言える事だが、結果は悲惨なものだった。クッションのような送風は機体を維持するだけで精一杯で、機体はわずか数メートルしか浮き上がらなかった。二つ目のプロトタイプも同じように、自らの重さを支えるだけで精一杯で、数メートル浮き上がったところでグルグルと回転して地面に叩き付けられる結果となった。

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 当時テストパイロットとして抜擢された人によると、このプロトタイプは当時確立されていた航空力学から全く外れたもので、プロジェクトに出費した12億ドルは無駄金に終わった。

 

8. アーサー・サックのAS-6(ドイツ:1944年)

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 1939年、ドイツ人の発明家、アーサー・サックはある大会で円盤状の飛行船を作ろうとしていた。彼の実験は失敗に終わったが、大会後、彼のアイデアはドイツ航空省の耳に届き、アーンスト・ウデット空軍大臣に「機体の制作を続けるよう」命じられた。完成した機体AS-6は廃棄された飛行船の部品から作られ、1944年にテスト飛行を開始した。

 作り上げられた機体はこれまでの飛行船とアイデアの根底は同じだが、注目すべきはその円盤状の羽である。この機体は後にナチス・ドイツがUFOテクノロジーを作ろうとしていたのではないか、という陰謀論の火付け役となった。

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 しかし真実というのは残酷なもので、実はこの機体、満足に飛ぶことさえままならなかった。円盤状の羽は機体のバランスを大きく崩してしまい、AS-6のオリジナルのデザインでは機体を空中に浮かせるだけのエネルギーを出力する事さえできなかった。

 サックはオリジナルから数多くの改良を行ったが1945年に空襲を受け、プロトタイプは破壊された。連合軍がブランディス空軍基地を1945年4月に占拠した頃には、AS-6の痕跡は無く、破壊された物とみられている。
 

7. クージネットRC360エイロダイン(フランス:1950年代)

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 エイロダインは円盤状の飛行船を作ろうというフランスの初の試みであった。フランスの思惑はアメリカと同様で、垂直離着陸が可能な機体で、滑走路を必要としない夢の機体の開発にあった。

 この機体の発案者はレーネ・クージネットという人物で、18歳の頃には既に航空関係の発明を数多く行い、特許申請も済ませていた人物であった。フランス空軍のメンバーは天才ともいえるクージネットとコンタクトを取り、太平洋横断を軽々とやってのける円盤状の機体の開発を行おうとしていた。しかし、結果はとても満足の行く物ではなかった。

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 1950年代、フランスは「ヘリコプターのように離着陸が出来、飛行機のような動きが出来る飛行船」の開発を望んでいた。この結果として登場したのがマルチウィングのエイロダインである。特許申請は1957年にされたが、その頃にはクージネットはこの世を去っていた。1956年、エイロダインの開発がうまくいかないことを気に病んだ発案者のクージネットは妻と共に自殺してしまったのだ。

 クージネットはフランスから満足の行く研究資金を与えられておらず、その結果作られた3/5サイズのプロトタイプは、飛ぶ事すら出来なかった。このデザインは1950年代に多発したUFO目撃情報により影響を受けたことが大きい。その為、当初この機体が開発された時は「画期的な機体」として大きく期待されていたのだ。

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 エイロダインには6つのエンジンが搭載されており、96個の小さな羽が機体を持ち上げるはずだった。失敗に終わったものの、エイロダイン対する国民の期待は大きく、マスメディアは「フランスの円盤型飛行船!」と大きく取り上げ、「フランスの上空をエイロダインが飛び回る時代はすぐそこまで来ている」。とまで言っていた。

 フランスでは未だに「最高の発明だ」。という者もいるが、実際の所大失敗に終わったのだ。

 

6. 天体物理学を導入した円盤(アメリカ:1963年)

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 この飛行船に関する情報はあまり知られていない。1963年7月、ポピュラー・サイエンス誌は、天体物理学を応用した新たな機体が米テキサス州ヒューストンで開発されたと発表した。

 飛行船は上部から発射される空気で浮上する新しいタイプの物で、屋根はその風を受け止める為円盤状であった。しかし、この研究が成功したのかどうかは不明だ。何故なら、この研究は一度掲載されただけで、その後の続報が全くなかったからである。

 飛行船に使われたのは「コアンダ効果」というもので、1910年にジェットエンジンが開発されるきっかけとなったものだ。この航空力学はヨーロッパで生まれたもので、イギリス政府からも注目されていた。記録によるとコアンダ効果の発明家はパリに住んでおり、フランス政府は当初彼がドイツに肩入れしていると思っていたという。

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 コアンダ効果は、簡単に言うと、粘性流体が特定の角度から噴出された場合、近くの壁に引き寄せられるというものである。これを応用して作られた機体は理論上垂直離着陸が可能で、噴出する角度を変更する事で移動が可能となるはずであった。

 最後に公開された情報によると、機体の安定性に問題があったと言われているが、その後の情報は未だに公開されていない。

via:urbanghostsmedia・原文翻訳:riki7119


 戦時中から戦後の冷戦時代、世界各国で進められていた垂直離着陸のできる円盤型の飛行物体。当時の人々はきっと信じてしまったことだろう。自分の見たものこそが宇宙からやってきたUFOであると。

 

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