ユリシーズ【小説】Ⅲ梗概第一部【前】重要度〇位
第二部 ユリシーズの放浪
第四挿話 カリュプソ
時刻は再び午前8時に戻り、舞台はダブリン市内エクルズ通りのレオポルド・ブルーム宅に移る。ブルームは、38歳のハンガリー系ユダヤ人で『フリーマンズ・ジャーナル』の広告取りである。ブルームは、妻のためにパンと紅茶の用意をし、途中で豚の腎臓を買いに肉屋まで出かける。家に戻ると手紙と葉書が届けられており、そのうち一つは娘のミリーから、もう一つは歌手をしている妻モリーのコンサートマネージャであるブレイゼズ・ボイランからのものであった。ブルームは、娘からの手紙を読みながら、妻とは別に朝食を取る。ブルームは、妻がボイランと浮気をするつもりだと考え、その考えに苦しめられる。ブルームは、家の外の便所で排泄し、教会の鐘を聞いて、急死したディグナムのことを思う。
場面=家、時刻=午前8時、器官=腎臓、学芸=経済学、色彩=オレンジ、象徴=ニンフ、技術=語り(中年の)、神話的対応=寝室のベッドにかかっている絵画『ニンフの湯浴み』のニンフがオデュッセウスを7年間引き止めたカリュプソに対応する。
第五挿話 食蓮人たち
ブルームは、郵便局に向かい、密かに文通している女性マーシャ・クリフォードから、自分の変名「ヘンリー・フラワー」宛ての手紙を受け取る。郵便局を出たところで知人のマッコイに出くわし、厄介に感じながら言葉を交わす。それから人気のない場所に入り、手紙を読む。その後、カトリック教会に入り込んでミサを聞いた後、薬局で妻の香水の調合を頼み、ついでに自分用にレモンの香りのする石鹸を買う。店を出て、知人のバンダム・ライアンズに新聞を見せてやり、その際に図らずも彼の競馬予想のヒントとなる言葉(Throwaway)を口にする。それから、入浴中の自分をイメージしながら浴場に向かう。
場面=浴場、時刻=午前10時、器官=生殖器、学芸=植物学・科学、象徴=聖体、技術=ナルシシズム、神話的対応=ブルームが見かける馬車の馬、教会の聖餐拝受者、ポスターの兵士、また彼の思い浮かべる入浴者とクリケットの観客が、ロートパゴス族の蓮の実を食べて理性を失ったオデュッセウスの部下たちに対応する。
第六挿話 ハデス
ブルームは、ディグナムの家から会葬馬車に乗り込み、北郊のグラスネヴィン墓地に向かう。同乗者には、スティーブンの父サイモン・ディーダラス(ジョイスの父がモデル[28])がいる。ブルームは、馬車が彼の息子スティーブンとすれ違ったことを彼に告げ、生後すぐに死んだ自分の息子ルーディのことを考える。また、馬車はボイランともすれ違う。車中の話が自殺に関することになると、カニンガムは、ブルームの父が服毒自殺していることを知っているので、話を逸らそうとする。馬車はさまざまな場所を通って墓地に到着する。ここで埋葬に立ち会う間、ブルームは、マッキントッシュに身を包んだ見慣れない男を目にする。ブルームの想念は、しばらく死者を巡って展開していくが、結局のところ「温かい血のみなぎる生命」(warm fullblooded life)を受け入れる。
場面=墓地、時刻=午前11時、器官=心臓、学芸=宗教、色彩=白・黒、象徴=管理人、技術=インキュビズム、神話的対応=馬車が通り過ぎるドダー河、グランド運河、リフィ河、ロイヤル運河が冥界の四河に対応。会葬に立ち会うコフィ神父がケルベロスに、墓地の管理人がハデスに、死者ディグナムがキルケの宮殿から墜ちて死んだオデュッセウスの部下エルペノルに対応する。