エルフ転生からのチート建国記  作者:月夜 涙(るい)

第二章:風と火と 29/104 第六話:火狐の伝統料理

 

 「それで、出来た肉汁を煮詰めたクランベリーソースに注いで、岩塩で味を調えて、

 香りのいい山菜を加えると、特製ソースの出来上がり。これをかけると、

 ステーキのうまさが何倍にもなる」
 甘酸っぱく、肉汁の旨みに溢れたソース。これは肉にかけてもうまいが、

 フライドポテトにかけても最高だ。ステーキとポテトは一緒の皿に盛るので、

 そういう食べ方もありだ。

 

 「もう、お肉なんていらないから、このソースをパンに塗って食べたい」
 「私も私も、いつもの蒸し芋にたっぷりかけるのもいいかも」
 「あっ、それいい!」
 「シリル様の話だと、小麦も明日から使えるそうね。麺に絡めて炒めるっていうのは?」
 「あんた最高!」
 「肉の準備と、今日使う分のソースができれば、普段使い用にこのソースは

 作りだめしておこう。かなり保存も利くし、どうせ筋の塊も、肉を漬けるために作った

 クランベリーソースも捨てちゃうしね」

 

 ジャガイモ班と、ステーキ班でかなり時間を食ったので少し早足でシカ料理班と、

 スープ班のところに向かう。
 この二つは、セットだ。 最高のスープに、シカ肉で作った料理を入れて完成させる。
 「よし、スープから作る。とは言っても、こっちは手間はかかるが手順は簡単だ」
 シカの後ろ足を持ってきた。
 実は四足歩行の動物は、前足よりも後ろ足のほうがずっとうまい。
 「まずは、ズンドウに水をたっぷり入れて、そこにすね肉と、肉をそぎ落とした骨を砕いて入れる」

 「あとは、親睦会がはじまる少し前までひたすら、かき回してアクを取る。このスープは、

 うまく作れば澄んだ透明のスープになる。でも、手を抜けば白く濁るよ。

 サボればすぐにわかるから、頑張って」
 「単純に、スープ単体で美味しさを求めるなら、イノシシのほうを使った」
 そっちのほうが脂質も多く、わかりやすい美味しさになっただろう。
 「だけどね、ジャガイモ料理も、イノシシ料理も、すごく脂が多くて強い料理なんだ。

 スープまで、そんな感じだと、胃がもたれちゃう」

 そう、スープは他の主役たちを輝かせることが狙いだ。
 そういう意味ではシカは最高の材料となる。脂肪の強さがないが、純粋な肉の味ではイノシシに勝る。

 「それにね。派手だから美味いと言うわけじゃない。ちょっと簡易版を作ってみようか」

 「あっ、優しい味」
 「本当ですね。飲んでるとほっとする」
 「いくらでも飲めそう」
 ステーキで、疲れた口を、このスープで休ませるのが理想だ。