信州の泉より転載

二度の植草事件と郵政民営化の因果論的関係を考察する


 今年の2月頃であるが、政界事情に通じているある人から聞いた話である。その御仁はしょっちゅう議員会館に出掛けているが、ある時、某議員秘書から聞いた話を私に教えてくれた。小泉純一郎氏は、とある、くだけた集会で「日本人は30万人くらいになればいいんだ!」と言ったそうだ。その秘書さんは、たとえ冗談でも小泉氏がそういう暴言を吐く姿を見て、彼の人間的な本性を強く感じたと言っていたそうである。この話の信憑性は確かめることはできないが、小泉施政の5年6ヶ月を振り返ってみれば、その破壊衝動のあまりの凄まじさに、いかにもありそうなことだと思えてくる。

 

私はこの話を聞いた時、とっさに2007年に「サンデー毎日」でスクープされた記事を思い出した。それは、旧竹田宮家御曹司が暴露したことだが、小泉元首相が「皇室は最後の抵抗勢力」と言った言葉だった。明らかにこの真意は皇室解体であり日本国家の消滅を望んでいる。彼は日本人に熾烈な怨恨を抱いていることがわかる。これらの言動を考えると、小泉氏が郵政民営化へ向けた異常な執着も、根底には日本解体意志がはっきりと垣間見れる。


 小泉氏は1992年暮れ、宮澤内閣の郵政大臣に就任した時、郵貯・高齢者向けマル優の非課税枠拡大について「必要ない」と言明して郵政族に猛攻撃を喰らった。郵政官僚は小泉氏の指示に従わず、彼は仕事ができない状態に置かれたようだった。多分、この時の恨みが根幹にあって郵政民営化という日本解体作業を決意したのだろう。それに、理由は知らないが、小泉氏は皇室を抵抗勢力扱いしたり、日本の人口が30万人でいいと言ったり、日本そのものを憎悪している節がある。日本は最も避けなければならない人物を宰相にしてしまったのだ

 

植草一秀さんは、第一次小泉内閣が発足する一年前に、経済の進講をするために小泉氏に会っているが、小泉氏は怒気を含んで植草さんを遮り、滔々と持論を展開したそうである。植草さんはこの時、この人物が首相になったら、日本は奈落の底に引きずり落とされることを直感した。はたしてその直感は完全に的中した。その後の日本は説明するまでもなく惨憺たる有様を呈している。彼は竹中平蔵氏と組んで日本を青息吐息の状態までに破壊した。佐高信氏がこの両者をギルティ・ペアーと呼ぶ所以である。

 

小泉氏は総理大臣になる一年も前に、植草さんを、自分が描く方向性とはまったく異なる阻害要因だと位置づけていたと思う。すでに植草さんは小泉氏が国政を実行したら、とんでもない破壊的結果を招来すると確信していたので、小泉政権初期から果敢にその政策を批判していた。今だからよくわかるが、小泉政権は後期高齢者医療制度や障害者自立支援法など、弱者を経済的に虐待する悪法を濫造した。また今年の母子加算の廃止も、小泉構造改革の流れで生じた棄民政策の一つである。


 彼らが行った傍若無人な規制緩和によるセーフティネットの破壊も、弱者の棄民ということだけじゃなく国家秩序を著しく毀損しているのだ。このように、小泉・竹中構造改革は日本の国益とは正反対の国家解体の目的を持つ負の国策だったと言う以外にない。文字通りの国賊為政者達であった。

 天性の洞察力と鋭敏な知性、そして国民目線の姿勢から、小泉国政の危うさにいち早く気付き、真正面から警告を発した一人の有識者がいた。エコノミストの植草一秀さんである。彼が小泉氏を国政的な危険人物とみなしたと同様に、小泉氏も植草さんを放置しておくと、自分たちの悪徳利権奪取計画にとって、著しい阻害要因になると思っていたはずだ。

 

2004年と2006年に、植草さんは理不尽な仕掛け事件に遭遇した。私は2006年の事件以来、いろいろ調べた結果、植草さんが果敢に行っていた小泉政権の弾劾、指弾行為が因果論的に二度の事件に繋がったと確信している。二度とも政治謀略事件であり、植草さんには塵ひとつほどの罪はなかった。

 悪徳ペンタゴンに属する権力側の政治家や、“それに連なる”検察・警察・裁判所の国家機構は、小泉・竹中両氏の主導する国政の方向性に真っ向から歯向かう有識者個人を狙い撃ちした。二重の意味でこんなことはあっていいはずがない。一つは権力が無垢な個人へ恣意的に向けられる社会は警察国家になる。次は、北朝鮮を見てもわかるように、国家権力が国民を睥睨し始めると国力の脆弱性を招いてしまう。

 

小泉政権は国政としても根底から間違っているが、実はその背景は、米系外国資本が絡んだ犯罪政権だった可能性がある。もちろん、後期高齢者医療制度などの国民を苦しめる多くの制度乱立も国政的な罪はあるが、それとは峻別するべき、重大な国家犯罪の二つの位相を植草さんは睨みつけていたのである。この二つはあまりにも巨大な規模を持っており、却ってそれが国民には目くらましとなっていた。

 国家犯罪の疑いが濃厚な第一の位相は、りそな銀号の破たん処理に絡む金融操作の疑いである。つまり、金融行政が干渉した恣意的な株価変動による“りそなインサイダー取引疑惑”である。第二の位相は、この策謀の次に控えていた国家改造プロジェクト・郵政民営化であった。小泉氏や竹中氏、そしてその背景に控えている悪徳ペンタゴンの中心勢力は、この二つの国家犯罪に唯一気付いて警鐘を鳴らす可能性を持つ有識者を神経質に点検していた。その筆頭が植草一秀さんだった。



そのうち別記事で詳しく書くが、植草さんが遭遇した二度の植草事件は、明らかに郵政民営化準備室の設置と大きな係わり合いがある。二度とも郵政民営化実行計画の重要な局面で発生しているのだ。

2004年4月8日の品川駅高輪口のエスカレーターで起きた仕掛け事件の時、視線を官邸に移してみると、郵政民営化準備室が4月26日に新設されている。また同年の2月中旬に行われた経済財政諮問会議では、後に四分社化に繋がる郵政三事業の機能分離を、民営化論の中心にするように、竹中経済相によって確認されている。つまり、分割民営化の骨子がこの時に固まっているのだ。

 

もう一つ重要なことは、この時期から竹中平蔵氏はアメリカの政府関係者、保険会社関係者とコンタクトを取り始めている(※郵政民営化準備室の他のメンバーも会っていたかどうかはわからないが)。10月に竹中氏は例の“ゼーリック書簡”を受け取っている。こういう動きは、何としても2005年に郵政民営化関連法案を成立させようというアメリカ政府の強い意志が見える。竹中氏と米政府関係者が主導して、郵政民営化の本格的な準備作業に取り掛かる時、これを阻害する最大の有識者が植草一秀さんだったのだ。ここに植草さんの口封じを行う彼らの動機がはっきりと見えている。

 

次に2006年9月13日、京浜急行線「品川―蒲田駅間」の下り電車内で仕掛けられた植草事件だが、この時期も翌年2007年4月(実際は10月)に郵政民営化の本格的なスタートを控えていて、実行関係者はこれに異を唱える意見の表出に強く神経を尖らせていた。この時も植草さんは果敢に小泉政権の間違いを指摘し続け、りそなインサイダー疑惑を提起し続けているのだ。このまま放置すれば、間違いなく植草さんは郵政民営化の闇に真っ向から言及することが彼らにはよくわかっていて、2006年の9月に、植草さんを国策捜査に仕掛けて口封じを決行したのだ。

 

以上のように、2004年と2006年の植草事件と、官邸の動きを照合すると、植草さんが国賊的国策に仇なす有識者として、国策捜査を仕掛けた権力側の動機がはっきりと見て取れるのだ。悪の巣窟が、悪の計画遂行を達成するために、リスク・アセスメントを行った結果、浮かび上がってきた有識者が植草一秀さんだったというわけである。しかし、植草さんを襲った二度の国策捜査は大きな誤算を招いた。それは植草さんの持ち前である強靭な意志が、彼を不撓不屈にしていることだ。見ているがいい、彼が追及する「かんぽの宿」疑惑は必ず然るべき結末に到達する。


 みなさんは植草さんの立ち上げたブログを読んでみて、植草さんが悪いものは悪いと、ぶれずに言い続けるお人であることがわかったと思う。こういう姿勢を一貫して通すお人だから、私利私欲と売国を企む連中に睨まれてしまうことは、ごく当然だと言える。こういう人を国政の中枢に置けば、傷ついた日本の回復は可能になる。