夜、めったに掛けてこない父から
連絡が入った


「もしもし 元気?

今日はね、とっても寒いの

寒くてね、冬物の服を出してきて、今
着てるんだよ

すごく寒いんだ

そっちはどう?みんな元気?」


父は94歳

介護認定を受けて2~3年

脳の海馬の萎縮がみられるものの

受けたテストはパーフェクト
普段の会話も何ら問題がない
非常に珍しいケースらしい


「そんなに寒いんだ。暖かいお茶でも飲んで温まってね。
こっちはみんな元気だよ、ありがとう」


このあと母に替わると
父が急に、私に電話を掛けると言い出した経緯を話してくれた

「今日は寒いから電話する」と言うものだった

離れて暮らす父と母、二人足すと180歳に手が届きそう

一見おかしな理由に聞こえるけれど

寒すぎるから離れて暮らす子どものところは大丈夫かと心配してくれたのか

この時期の異常な寒さを知らせたかったか



父は
電話嫌いで
家の電話が鳴り続けても一切出ない人だ


私が学生の頃、父と二人で留守番した時
何の会話をしたらいいのか
さっぱりわからず変に緊張したものだった



90を過ぎて初めて持った携帯電話


話す相手は家族限定

だからなお
父からの電話は嬉しく思える


年を重ね、離れて暮らす二人に
私が出来ることは
時おり交わす「もしもし、元気?」


親から見ればいつまでたっても子は子

元気でいるかと心配してくれる


その気持ちに
うん、元気だよ ありがとう
と、素直に答える

父の一日
寝る、食べる、薬を飲む、トイレに行く
ワンクール24時間からはみ出てしまう

趣味の時間や何かを調べたり新しいことに費やす暇が作れない

好きな事に時間がとれない

そんな父に
長生きしてね とは言わない事にしている

まだまだずっと生きていて欲しいけれど

父の気持ちを考えると
それは返って酷に思う

それよりも

美味しいもの食べてね

また帰るときはよろしくね

今まで一人で何でもやって来たのだから
今はもっと回りに頼っていい次期に来てるんだと思うよ

いてくれるだけで安心


こんな言葉で
気持ちを伝えている

感謝しか ないから



あと何回会えるかな

いつも
頭をよぎる

だから

伝えそびれの無いように

短い会話も大事にしようと思う


少なくとも私には
立派すぎる父

今時、なかなかいない自慢の父