(映画.com)
レオス?カラックスの映画に欠かせない俳優といえば、ドニ?ラバンを置いてほかにいない。84のデビュー作「ボーイ?ミーツ?ガール」から「汚れた血」、「ポンヌフの恋人」のアレックス3部作を経て、最近のオムニバス映画「Tokyo!」まで、その付かず離れずのコラボレーションは30年近くにわたる。その彼が、カラックス13年ぶりの新作「ホーリー?モーターズ」では、11のキャラクターを演じる。主人公オスカーの職業は、毎日異なる人格に扮し決められた役割を演じること。だがその依頼主や、彼が務める「ホーリー?モーターズ」という会社の正体は謎に包まれたままだ。監督自身も冒頭に登場する、カラックス映画自体のメタファーと言えるようなこの新作について、またふたりのコラボレーションの変遷についてラバンに語ってもらった。(取材?文/佐藤久理子)
あなたの演じたオスカーは、どこまでが役割を演じているのかわからない謎めいたところがあります。あなた自身はこの役柄をどのように解釈したのでしょうか。
「彼は昼も夜も、つねに何かの役を演じている。冒頭、家を出てリムジンに乗るのも任務だし、彼が家に戻ってからもまだ役割を演じ続けていると思う。でもその理由は僕にもわからない(笑)。いわばノマドのように彼のパーソナリティは変わり続け、一定のところに落ち着くことがない。俳優である僕自身のケースとちょっと似ているね。違いはオスカーの場合、終わりがないことだ」
カラックスは本作について、とくに俳優に対するオマージュの映画ではないと語っていますが、それでもやはり、長年一緒に仕事をしてきたあなたへのオマージュが含まれていると感じられます。
「たしかに僕もそう感じたよ。自分に対する、あるいは役者の人生に対するレオスのオマージュ。もちろんこの映画はそれだけではなく、もっといろいろなものを含んでいるけれど、その点に僕はもっとも感動させられた」
カラックスとあなたのコラボレーションはほぼ30年にわたりますが、その関係はどう変化しましたか。
「彼と始めて会ったとき、僕はまだ22歳で、いまだになぜ彼が僕を選んでくれたのかよくわからない(笑)。でもすぐに意気投合したわけじゃなく、オーディションも受けたし、半年ぐらい時間が掛かった。彼とは同じぐらいの年齢だけど、彼の方が人生経験が豊かで僕より物事を理解している印象を受けた。彼は寡黙で仕事以外では顔を合わすことがなかったし、僕らの関係は遠慮がちなものだった。それが変わったのは、「ポンヌフの恋人」の後、17年ぶりに「Tokyo!」で再会してからだ。お互い成長して、俳優と監督としても成熟し、本当の会話ができるようになった。おそらく自分も成長したせいだろう。僕らアーティストの職業というのは、なにより人生経験がものを言う。それがチャレンジを可能にし、さらなる創造が可能になる。そういう意味で、この映画は僕らのこれまでにない成熟の賜物だと思う」
「ホーリー?モーターズ」は4月6日ユーロスペース、シネマカリテほか全国で順次公開。