スポーツ界での暴力やパワハラといった不祥事が相次いでいる。なぜか?

 日本の伝統的指導法に問題があるという見方がある。具体的には精神主義、つまり根性をたたき込むといった指導法に根本的原因があるという説だ。それはそれで必ずしも間違ってはいないと思う。

 しかし、そうした指導法を支えてきたのも、実は今そうした指導法に対して大上段から批判しているメディア自体であることを、メディア自身が忘れているようだ。

 今年1月4日、71歳という若さで旅立たれた星野仙一氏。メディアは一斉に不朽の名監督と褒めたたえた。

 確かに星野氏の指導者としての実績は、他に例をみないほどのものがあった。中日、阪神、楽天で監督としてチームを優勝に導いた。それも優れた戦力を与えられての結果ではなかった。むしろ弱小チームを優勝チームに育て上げたことは、野球ファンなら知らない人はいない。そして彼の指導法は、鉄拳指導としてもよく知られている。

 言っておくが、星野氏を名監督としてヒーロー扱いしてきたのは、メディアである。新聞もテレビも、星野氏の鉄拳指導を問題視したことは一度もない。星野氏を英雄視すればするほど、当然の結果として選手を育てるには鉄拳が必要ということになる。

 星野氏を英雄視してきたメディアで、自らの報道姿勢について反省しているところは一つもない。そして、そのことに誰も気が付かないというのはどういうことか。

 メディア批判はとりあえずここまでにしておくが、日本の指導法の最大の問題は、指導者が自分の成功体験をそのまま選手に押し付けようとしてきたことにある、と私は考えている。

 たとえば阪神タイガースの金本監督。私は骨の髄までの阪神ファンだが、金本監督の選手育成法は根本的に間違っていると思っている。筋トレを最重要視していることと、暴力は振るわないまでも厳しく育てることが大切だと思い込んでいるようだ。

 王監督は選手時代、片足打法でホームランを量産した。以来、足の上げ方は選手個々によって異なるが、右打者なら左足を、左打者なら右足をあげる打法が日本の野球界を席巻している。アメリカに渡った大谷選手も日本時代はやはり片足打法だった。いま大谷選手はべた足打法で、メジャーリーグでとんでもない飛距離のホームランをぼんぼん打っている。しかも大谷選手は左バッターでありながら、ほとんどのホームランはセンター越えである。理論上、彼はゴルフと同じ重心移動をしているからだと思う。

 片足を上げる時は、上げていない足(軸足)に全重心がのっている。ボールをヒットするときに、バットのスピードが最大になるように、上げていた足を降ろしながら重心を軸足から上げていた足に移動させる。きわめて困難な打法である。だから、王選手も自宅の畳が擦り切れるほど重心移動の練習を重ねてきた。

 一方、ゴルフはどうか。誰も片足打法でボールを打とうとしない。ひょっとしたら片足打法のほうが、ゴルフでもボールは飛ぶかもしれない。が、ゴルフの場合は、野球のグランドと違って打つ方向が90度と広いわけではない。ボールをどの方向に打つかが。飛距離よりも重要になる。だからべた足のままで打つ時に重心移動する。重心移動してインパクトの瞬間にヘッドスピードが最大になるようにしなければならないのは、野球もゴルフも同じである。

 大谷選手の場合、センター方向の打球が多いのは、ゴルフと同じ重心移動をしているからだと思われる。当然片足打法より飛距離は落ちるはずなのだが、彼の場合はセンター方向に130メートル級のホームランを打てる。よほど背筋が強いからではないかと思う。

 私はスポーツの専門家ではないので、独断と偏見に満ちた推測はこの辺でやめておくが、個々の選手の体質によって練習法を考えるのが科学的指導法ではないか。テレビを見ていると、いわゆる専門家と称する人が、「科学的指導法とはどういう指導法なのか」をまったく考えずに、言葉だけ乱用しているように思えてならない。

 ついでに精神面での指導法について言えば、叱ってのびる選手もいれば(時には暴力が有効なこともありうる)、長所をほめてのびる選手もいる。この違いはゼロか100かといった極端な違いではなく、個々の選手によって叱ることとほめることを微妙に使い分ける必要がある。個々の選手の精神面の要素も精神心理学的に解析することもこれからは必要になるだろう。