その他の対成形炸薬弾(HEAT弾)対策防御を知って限り上げてみた。

あっ!それと最後に『下に示すこんだけの防御アイデアが出され、実行されてても、それを全部無効にしちゃう新タイプの成形炸薬弾の登場』の話もチョロっと書く。



むふぅ…

書くと啖呵は切ったけれども、だ。

頭ん中にあることを文字に起こす…はやっぱ疲れる
加えて、書いた事を補強する資料探しが、疲れをニ倍にする。

orz…


1️⃣トーマシュルツェン(金網シュルツェン)

トーマシュルツェンを取付けたドイツⅣ号戦車


目が細かい約1cm角の鉄のメッシュ(金網)で出来た対成形炸薬弾用の金網の防御板。『トーマ』はまんま『金網』のこと。

第二次世界大戦の後半から末期、資材不足に悩まされてきたドイツ軍車両に装備されるようになったもの。

要は本体装甲にHEAT弾が直撃せず、空中で爆発してくれれば効果は無効になるのだから、鉄板よりローコストな金網でもOKという事が分かり採用された。

『え?元々シュルツェンってソ連軍の対戦車ライフル部隊がブッ放す、対戦車ライフルの弾をはじく為に考案されたモンだろ?スカスカの金網でライフルの弾は防げるのかい?』の疑問が出てくるが、


当時のソ連軍の対戦車ライフルの性能だと、『100m以内までソ連の対戦車ライフルを持つ狙撃手の接近を許さなければ、ドイツ軍戦車に取付けてある金網シュルツェンに求められるライフル弾をはじく・逸らすの能力は充分に機能し、ソ連軍のライフル弾は無効化出来た。』とのこと。

死角だらけの市街戦でなければ100mまで敵の接近に気が付かぬということはあるまいし、それよりもどんどん威力が増してきていたHEAT弾の直撃の方が恐ろしかったという背景が見て取れる。


2️⃣スラットアーマー

スラットアーマーで全体をぐるりと囲ったアメリカ軍のストライカー戦闘装甲車。

第二次世界大戦時のドイツ軍が使った『金網シュルツェン』の現代版といえるのがスラットアーマーだ。 こちらも成形炸薬弾(HEAT弾)が本体に当たる前に早期に起爆してもらえば本体にダメージは負わない。の考えで、当たれば敵の弾の信管が作動する程度の強度をもたせた鉄などのパイプ材でケージ(檻)を作り、それで車体の外周を取り囲むようにしたもの。

外観が鳥かごに見える為『バードケージ・アーマー(鳥かごアーマー)』のアダ名で呼ばれることもある。 重量も鉄板を張り巡らせるより軽く仕上がり、ケージの隙間から外がよく見れるので、戦車のみならず外部視察孔を数多く備えた『APC(装甲兵員輸送車)』や『IFV(歩兵連隊戦闘車)』に好適な装備として使われている。


3️⃣チェーンカーテン


砲塔後部にチェーンカーテンをぶら下げているイスラエル軍のメルカバ戦車

イスラエルの主力戦車『メルカバ』のシリーズの3あたりから見られるようになったイスラエル独特の対成形炸薬弾対策の装備

戦車は砲塔と車体の接合部が弱点なのだが、ココを守る為に砲塔の後部の張り出しに重りを付けた太い鎖をすだれ状にズラリとぶら下げている。

以降のメルカバシリーズにも、このチェーンカーテンが採用されているところを見ると、効果はしっかりあるのだろう。これもスラットアーマーの一種といえる。


4️⃣ゴムもHEAT弾対策になる

分厚いゴムを車体の前部に取付け、下部の防御を強化をしているポーランド陸軍戦車PT-91(トファルディ)

分厚いゴムを使うも成形炸薬弾対策には有効なのが分かっている。ゴムは破損するものの、破片やロケット弾などから車体を守ってくれる。



5️⃣露・宇(ロシア・ウクライナ)戦争の成形炸薬弾対策

まるで帽子か笠のように砲塔の天井面に取り付けられたロシア軍のT-72戦車

そして2022年2月24日から始まったロシア・ウクライナ戦争で、『自爆型ドローン』にHEAT弾を抱かせて、見つけた敵車両に上空から特攻や、最初の照準さえ付けてくれれば、複雑なプログラムを自動で行い、車体天井面の攻撃(トップアタック)をしてくれる米軍の携行式対戦車ミサイル『ジャベリン』などが行う攻撃戦術が顕在化。

車重とエンジンの出力の兼ね合いで、全ての面を分厚い装甲で覆うことが出来ない戦車などは天井面が他の装甲面と比較すると非常に薄く脆弱なので、この手の新しい天井面攻撃戦術を受けるとひとたまりもない。 


その為、フォルムとしても隠蔽も重視される戦車だというのに上面にスラットアーマーを急遽取付けてるロシア戦車が戦場に現れる。美的になんともみっともないし、こんなに頭が高くなると隠蔽がダメになって、敵にすぐ見つかるんじゃないのか?のツッコミもしたくなるのだが、生き死にに関わる事態だから止むを得ない。


……というのが、他に見られる対成形炸薬弾対策で生まれた他の防御だが、こういった対策をしても最近の戦闘ではこれでも完璧とは言えないのが実情だ。


というのもHEAT弾の方も『タンデム弾』という1つの弾に成形炸薬弾部が2つあるタイプが現れているからだ、

タンデム弾は弾頭部に近いHEAT弾が上記の防御装置を破壊する為だけに存在し、弾頭部に近いHEAT弾が、上記の工夫された防御装置に穴を開ける露払いをし、後部のHEAT弾が前部が開けた穴をくぐり、敵車両本体にブチ当るという仕組みで、防御板1枚ではどうにもならない事態となっている。

聞いたところによると、なんと1つの弾にHEAT弾が3個も付いてる『トリプル仕様のタンデム弾』まで登場しているようで、何とも大変な状況になっている。