ここだけ読むと対戦車ライフルは「オワコン(終わったコンテンツ)」だと思うだろうから、読んだ人は是非続きも読んどくれ。(次回UP)



🔵戦車の装甲を貫くライフル

第一次世界大戦、世界初の戦車を送り出したイギリスに対し、敵対するドイツ軍は当時、主力小銃だった「モーゼルGew98」用に開発されていたタングステン鋼弾芯を持つ、7.92mmの「K弾」が戦車に対抗出来る事に気がつく。

K弾は本来、遠距離狙撃や最前線の敵軍の哨所の防御鋼板貫徹目的で使われていた弾だったが、比較的近距離から撃てば英軍の戦車「菱形戦車MK.1」の装甲を貫徹出来た。

この戦車を打ち倒すために、前線の歩兵には5発、機関銃には給弾ベルト1本分のK弾が支給された。


ところが英国から、より装甲の厚い「MK.4」が出現すると、K弾では心持たなくなる。そこでドイツは1916年、世界で初めて「対戦車用の専用ライフル」の開発に着手し1918年に世に送り出す。それが口径13mmの弾を撃ち出す「モーゼル(マウザー)M1918タンクゲーベル」だ。

⬆M1918タンクゲーベル

当時の戦車や装甲車の装甲は「砲」だけでなく「銃」レベルで発射出来る高速硬芯弾で充分貫けた。そこで砲よりもかさばらない対装甲兵器として、列強各国は「対戦車ライフル」を採用。その状況で第二次世界大戦に突入する。


🔵当初は有効だった対戦車ライフル

第二次世界大戦が始まった頃は当時の戦車の装甲が薄かったので、対戦車ライフルはそこそこの威力を発揮した。だが戦争が進捗するとともに戦車の火力は強大に装甲はより分厚くなると、対戦車ライフルの威力は見劣りするようになり、急速に陰は薄くなっていく。

こうなる理由はこのライフルを扱うのが「人間」だからだ。

対戦車ライフルは兵士が一人で携行出来る重量で、加えて発砲時の衝撃も兵士が受け止められるものでなければならない。という根本的な「縛り」があり、戦車や装甲車の防御力の向上が、その「対戦車ライフルであるがゆえの縛り」越えてしまったのだ。

さらに対戦車ライフルの影が薄くなる中、より優れた装甲貫徹能力を有した「成形炸薬弾(HEAT)」を使った歩兵用携行式対戦車ロケットランチャーが開発され、対戦車ライフルとの世代交代がなされていった。


ところが「ある国」だけは第二次世界大戦中、対戦車ロケットランチャーの開発をせずに対戦車ライフルを使い続けた国がある。ソ連だ。

なんでソ連は対戦車ライフル使い続けたのか?は次回。

⬆第一次世界大戦時、敵であるドイツ軍から鹵獲したM1918を見せるニュージーランド軍兵士達。その大きさが分かる。


⬇M1918対戦車ライフル「タンクゲーベル」仕様