太刀川時夫とその仲間たちは、カンナ島での戦いから数ヶ月が経過した今も、新たな組織を立ち上げ、瀬戸内海の平和を守るために奮闘していた。しかし、海底で発見したあの装置の秘密が、未だ解き明かされていないことを心の片隅で気にかけていた。
ある日、太刀川はアレックス・キングと共に、深海探査艇を使って、装置が沈んでいる海底の領域に再度足を踏み入れることを決意する。装置はすでに停止されていたが、何か見逃しているのではないかという予感があった。
「太刀川、装置の近くには異常なエネルギー反応がある。」
アレックスがモニターを見ながら言った。その言葉に、太刀川の心臓が跳ねるような感覚を覚えた。
「それは、何かの設計図か?」
太刀川は、すぐに反応した。
「可能性は高い。海底の深くに埋まったその装置の背後には、普通では考えられないような技術が隠されているかもしれない。」
アレックスはさらに調べを進め、深海探査艇を装置の真下にまで近づけた。その瞬間、突如として画面に現れたのは、奇妙なシンボルと無数の数式、図面だった。
「これは……」
太刀川の目が見開かれ、言葉を失った。それは、海底の装置がもたらしただけではなく、世界中の海を制御するための技術設計図だった。おそらく、何千年も前に作られたもので、未だ解明されていない古代の技術が息づいていたのだ。
その設計図には、地球上の海流、潮の流れ、そして海底の地殻変動を調整するための詳細なメカニズムが描かれていた。装置は、海のエネルギーを無限に引き出し、コントロールするための道具として設計されていたのだ。
「これは単なる兵器ではない。」
太刀川は、しばらく沈黙を保った後、冷静に言った。「この装置は、海そのものを支配する力を持っている。もしこれを悪用する者がいれば、世界中の海を操ることができるだろう。」
アレックスもその意味を理解した。「その通りだ。海流を操作すれば、大規模な津波を引き起こすことも可能だ。これは、兵器としての用途にとどまらず、環境をも変える力を持っている。」
太刀川は再びモニターを見つめ、思案にふけった。「これを手に入れた者が、世界を脅かす力を得ることになる。それを阻止しなければならない。」
彼は装置を破壊するか、もしくはその力を封じ込める方法を模索するため、さらに研究を重ねることを決意した。しかし、その秘密を知ってしまった以上、太刀川は一人でその力を制御するわけにはいかない。
「我々は、この秘密を守るだけでなく、必要ならばこの技術を完全に封印しなければならない。」
太刀川はアレックスを見つめながら言った。「そして、海の支配者になることを夢見る者たちに、この技術を決して渡さない。」
アレックスは黙って頷き、深海探査艇を慎重に操縦しながら、海底の装置をさらに調査し続けた。装置が持つ力がどれほど恐ろしいものであったとしても、太刀川とその仲間たちは決してそれを悪用させないと固く誓っていた。
その時、太刀川は胸の奥で、かつて自身が目撃した海の神秘的な力が、ただの伝説ではなかったことを強く感じていた。海神の秘密が解き明かされようとしていたその瞬間、彼は新たな決意を胸に刻んだ。