「八百万分の一の神」最終幕55 | Ash(アシュ)Hのブログ

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 その日の夜

 

「・・看護師さん、いる?」

 

「はい、いますよ」

 

「やっぱりな。看護師さんなら、いてくれると思いました」

「はい、もし、私が美空さんの立場だったら、今夜は不安だろうから・・」

「ありがとうございます。ですが、今日は、いいです。看護師さんも連日お疲れだと思いますし・・・明日の方が大変そうだし、今日はゆっくりしてください」

「私は大丈夫ですよ・・美空さんが心配ですから・・」

「ありがとうございます。でも、今夜は一人になりたいの・・だから・・」

「・・そうでしたか・・わかりました。では、そうしますね。でも、何かあったら呼んでくださいね!すぐに来ますから!」

「わかりました」

 

カチャン・・・

 

 静寂ガ美空を包んだ・・・。美空は病室にたった一人になった。

 

(本当は看護師さんの言うとおり、不安でたまらない。見えるとか、見えないとかじゃなくて、目を開けることができるのかなって・・・本当だったら、お父さん、お母さんがここに来て、頭をなでてくれてるのかな・・目が見えなくなって、見えるものが増えた私だけど、それは見えない・・見える人には見えているのかな・・・。

 私、死にたいって思ってたけれど、ここまで生きてきた。お母さんたちと死にたいって思ってたけれど、今じゃ明日を不安に思うようになった。たぶん、これも『生きている』ってことなんだろうなあって最近思う・・・。それに、あれからいろんな人にあった。生きてなきゃ会えなかった。たまたまいい人たちだったけど・・・。

 あっ!!ひょっとしてこれって・・!?・・・今、ここに、いるの!?紫獲!)

 

「我を呼びしは、美空、ぬしか」

 

「私、覚えてるわ。自分が言ったこと『人生は平等じゃない』って。自分には悪いことばっかりって。でも、最近そんなことばかりじゃないって思い始めてきたの。私が出会った人たちはみんないい人たちだったの。だんだん生きてて良かったって思えるようになったの。これはあなたの力なんでしょ?」

 

「・・我、願いなき者には施すことなし」

 

「違うんだ・・てっきり、あなたの仕業かと思ってね」

 

「美空よ。それ、ぬしが力なり」

 

「私の?」

 

「ぬしが生きる力が絆となりて人を呼び寄せし」

 

「じゃあ、たいした願いを言っていないのに、紫獲、あなたが出てきてくれたのも、私の力のおかげなの?」

 

「そうかもしれぬ」

 

「ということは・・・私は神よりすごいってことかな?はは。なんだか、不安じゃなくなってきたかもしれないな・・・不思議な気分。この気持ち、どこかで同じ感じを味わったことが・・・そういえばね、紫獲。私、あなたから『実はぬしの母の願いを叶えた』って聞いた時に、本当は『じゃあまだ、私の願いは叶えてもらえるのなら、目を見えるように』と思ったの。でも、それはしなかった。だって、代償として大切にしているものが奪われてしまうのでしょ?その方が怖いって思えるようになったの。

 あと、神様でも人の生き死にはどうにもならないっていうのもわかった。ただ単に生きたいだけで、大切な正義感が奪われて・・なんてことになっていったら世の中大変だよね。目が見えなくなって、確かに大変だったけれど、生きることの大変さを実感したし、いろんなことがわかるようにもなったの。だから、お父さん、お母さんには感謝してる。最後まで、私を生かそうと守ってくれた。紫獲、あなたには見えるの?お父さんたちが?」

 

「我には見えず。ただ、あの日のぬしの母の願いし声、いまだ我が耳に残りし」

「ありがとう、紫獲。お母さんは紫獲の中でも生きているんだね」

「そうだ・・」

「私の中でも今でもはっきり、お父さん、お母さんの、何百、何千もの言葉が聞こえるの。いろんな言葉。怒った言葉、喜んだ言葉、笑った言葉、ほめてくれた言葉、一緒になって泣いてくれた時のことば。忘れない。私が忘れなければ、私の中で生き続けてくれるの。おじさんも。だから、神であるあなたの中に、母の声が残っているなんて・・・うれしい・・」

 

「美空よ・・神は一度願いを聞いたものの声は忘れず」

 

「・・あっ、そうか!二度も三度も願いを叶えるわけにはいかないもんね。感動して損した!・・あっ、そうだ・・私、今までは目が見えなくてあまり不思議に思ってなかったけれど」

「なんだ?」

「紫獲って、やっぱり今までに何人も願いを叶えてきたんだよね」

 

「そうだ・・それがどうしたことか?」

「私のように目の見えない人ばかりじゃないと思って・・・目の見える人の前にも現れるよね!どんな顔をしてるかなって?」

 

「我は神なり。よって、人の想像によりけり」

「と言うことは人によって違うっていうこと?」

「そうだ・・・」

「どうせなら神様らしくないほうがいいかな・・・。ありがとう、紫獲。神様なのにこんな話まで付き合ってもらって・・・。いつの間にか、周りから『強い子だね』とか言われて、本当は不安だらけで甘える人もいなくて、今日、一人になれてあなたに等身大の自分を出せたと思うわ。明日は不安だらけだけど、たとえ見えなくても、それでもいいつもりで、頑張ってみるからね」

 

「ああ、美空よ・・今日はゆっくり休みなさい(ありがとうとはこちらの言葉なり。そして、これで、さらば、美空)」